9月の渡米時にヒラリークリントンとだけ会談した先見の明のない安倍首相は、慌てて外遊の途中にニューヨークによりトランプと会談することとなりました。
こちらも大方の予想としてはトランプからは比較的友好的な発言がでるのではないかとされていますが、オバマと1時間半も話をしたトランプがすべて友好的なことを語ったかどうかはわからず、安倍首相との会談でも何が飛び出すかは判らないのが現状のようです。
一旦選挙前のような炎上商法は影を潜めているようですが、本領発揮はこれからということで、日本政府はなんら気を抜けない状況に入っているはずです。
Photo ハフィントンポスト
不動産屋で鳴らした独特の商法
そもそも米系の不動産ファンド勢は常に最初の金額をふっかけて、後から安くして落としどころを見つけるという非常に不誠実な交渉をするのが常道になっているようですが、トランプもまさにその一人で、日本は防衛予算を全額負担しろとか、メキシコとの国境に壁を作るとかいいながら、実際には壁がフェンスになってみたりと徐々に落としどころを明確にしてくるアプローチが非常に得意なようです。
恐らく日本に対しては同様の手口で様々ないいがかりをつけてくるものと思われます。なにしろ先方は政治家経験ゼロからのスタートですからプロトコルがあわないことは間違いなく日本側がここから苦戦を強いられるのはもはや規定演技の状況に差し掛かってきているといえます。
TPPと為替は妥協余地なしか?
オバマ在任中になんとか「TPP」の米国内承認を日本政府は期待しているようですが、トランプの前でこれがすんなり決定するとは到底思えず、事実上日本と影響力の少ないアジア諸国だけでしょんぼり実施するのが関の山ではないかと思われます。
恐らく外交辞令があったとしても、保護主義の塊のトランプがクルの輸入関税に深く係わる「TPP」に今から関心をしめすとは到底思えず、むしろ大統領特権で議会を通さずに金をかけずに決められる通商領域や為替への口出しはここからも相当激しくなることが予想されます。
特にクルマの輸出に関しては台数制限などを口にされれば国内の自動車メーカーの株価は軒並み下落ということになり、しかもドル高けん制がでればまず日本が矢面に立つことになりそうで、米国の株価は上昇しても、ここから日本株が本当に連動して上昇するかどうかはかなり怪しい状況になってきています。
一旦ヘッジファンドの買いが年末に向けて緩めば1万8000円に近づいた日経平均も下落する可能性は高く、今回のトランプ政権でもっとも割を食いそうなのは新興国と日本になる恐れがでてきています。
またドル高に対するけん制が一体どこで登場するかも非常に気になるところです。すでにご紹介しているように「ドルインデックス」は年初来高値を更新した状態ですから、ここからさらに上がる状態になれば必ず米国サイドから何かの警告がでることになりますし、トランプの口からでることがもっとも相場に響くことになりそうです。
国債金利はすでにピークまで来ている可能性
ここ数日前に新債券王の「ジェフリー・ガンドラック」が米国の10年もの「国債」の金利が年内に2.35%を超えることはないと予想していましたが、既にもう相当いい線まで来ており、一旦はピークをつけた可能性が高まってきています。
Data Bloomberg market
17日の会談で特別問題も生じることなく話が進めば一旦はドル円も買い上げられる可能性はありますが、具体的になんら成果がある話にはならないとも思われ、今の上昇が継続的に続くとは思いがたい状況で、油断は禁物です。
今年の米国の感謝祭は11月24日で23日から実質的な手仕舞いになりますが、スケジュール的にはあと一週間あまりで、今週後半から手仕舞いの売りがではじめればドル円もそれなりの下落を加速させる動きに注意が必要となりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)