どうも不可解な動きに見えた10日のNY市場ですが、相場が一昼夜一回りしてみて、やっと状況が把握できるようになってきています。今回はここからの相場の動きについて触れてみたいと思います。
きっかけはトランプの勝利演説といわれるが
9日の開票終了後ドル円相場が上昇したのは、下がらなくなっての一定の「ショートカバー」で、ヘッジのために売りをかけていた「実需筋」などが損を覚悟で順次はずしていった相場が、103円台中盤まで戻ったのは明らかにこの動きの結果と見られますが、NYタイムに大きく相場が動くきっかけを作ったのは誰あろうトランプ自身の勝利演説であったようです。
一般市民は比較的まともな演説に旨をなでおろしたようですが、金融市場は異例とも思える財政出動に触れた中身に結構反応したようです。
「我々は都市部のスラムやトンネル、高速道路などのインフラを立て直していきます。これは非常に重要なことなのです。」
とあえて財政投資のことを組み入れた点を相場は大きく評価したようで、これがきっかけで相場は大きく動き出し、まず売られた債券のおかげで金利が大幅上昇、10年ものの米国債はあっさり2%の利率を超えた上昇を示現しましたが、それを超える期待で株がさらに買われることとなり、結果として高金利、株高、ドル高という新たな三点セットが成立する運びとなったようです。
ただ、この相場は単純に相場が好感して買い上げたわけではなく、当然相場を先導した輩が存在していることは間違いありません。
恐らくは期末利益対策のためのヘッジファンドディール第二段の可能性が強く、月末か、12月14日の「
FOMC」前に一旦手仕舞いになるリスクも当然考えておく必要があります。
リスクだけ強調されたトランプが大統領決定であっさり期待に変化
昨日も一昨日のコラムでも書いていますが、本来トランプが大統領に決定で市場リスクはMAXになり相場がそれなりの下落をすることを多くの市場参加者が想定していたにもかかわらず、あっさりそれが期待に変わりましたというのはかなり妙な感じでしたが、仕掛け人がいて勝利演説にあわせて買いをスタートさせていけばトレンドを無理やり形成できないわけではありません。
相場上昇の過程でショートが切らされたことから、さらに相場が跳ね上がるという動きになったことはどうも間違いないようです。
この相場の動きを正確に説明できないメディアの多くはトランプ期待から相場上昇とありふれた理由を口にしていますが、どうみても仕組んだ輩がいたことは間違いなく、日経平均などでも難なく1000円を持って帰ったファンドが存在しているようです。
このまま年末までするする相場は上昇するのか?
多くのトレーダーが気にされているのは、いきなり上昇相場となった動きに順張りでついていっていいのかどうかということであろうと思います。まず債券金利は高止まりしていますので、金利のことだけ考えればドル円は上昇傾向を保つ可能性はありそうです。
ただしすでに107円に近づいていますから、「
実需」の円買いがかなり行く手を阻むことは間違いなく、うれしくなるほどの青天井が待っているわけではないと思われます。
また11月30日には「OPEC」の総会があり、個別国の減産が破綻になれば株価への影響は免れず、ドル円は下落のリスクが高まりますし12月4日にはイタリアの憲法改正を問う国民投票もありますから、12月14日の国民投票を待たずに調整が入る危険は十分に考えられます。
トランプ政権のスタッフやブレーンの顔ぶれをみないとトランプ政権の方針は具体化していきませんから、完全に相場が上昇過程に入って年末相場がやってくると考えるのはまだ早そうです。
とくに為替に関していえばドル円は来週にでもどこかで調整が入る可能性が高くなりそうです。ただ100円を切るような下落は当面訪れないと思われますので、高値を売るべきなのか下値を買うのかはかなりよく検討しなくてはなりません。現状では上値のほうが先に限界に到達しそうな雰囲気です。