2010年あたりから急激に人気がでたシステムトレード(通称シストレ)ですが、気がつくとこのサービスから手を引くFX業者が増え、10月22日には選べるミラートレーダーなどシストレをかなりの売り物にしていた「FXプライムbyGMO」がサービスを終了し、すでに数えるほどの業者しか残っていないことに気づかされることとなりました。
いや、「M2J」の「トラリピ」をはじめとしてシストレはまだたくさん存在するだろう?と反論されるトレーダーの方も多いとは思いますが、イフダンをループ上にして繰り返し売買するのは確かに自動ではありますが、いわゆる戦略に基づいて自動売買するシステムトレードとは異なるもので、国内FX市場はまさにこの領域に人気が移行してしまったことが判ります。
果たしてシストレはなぜ国内の個人投資家に根付かなかったのでしょうか?今回はそのあたりに触れてみたいと思います。
FXプライムbyGMOは10月22日午前6時でついにサービス終了
ミラートレーダーはイスラエルを本拠地とする、トレーデンシー社が開発したシステムトレードの仕組みで、最大のメリットはFX業者のサーバー上で運用が可能であるため、一旦セットしてしまえばクライアントサーバー、つまり顧客のパソコンのほうは電源を切ってしまってもワークするところにありました。
様々なプロが提供するストラテジーを複数選択すれば名前のとおりシステムが勝手に売買してくれるということで、一時非常に注目を浴びた仕組みとなり、「FXプライムbyGMO」でも初心者向けのドアオープナーツールとしてかなり広告に力をいれたサービスとなっていたはずなのですが、この7月にサービスの終了を突然マーケットにアナウンスし、10月22日をもってひっそりとシストレ市場から撤退することとなってしまったのです。
新規の利用者が増えなくても既存利用者だけでまわして利益がでるなら辞めるはずはないわけで、結局のところ新規利用はとれないは、利用者は激減するはで利用コストを賄えなくなったことがこうした判断につながっているものと思われます。
2015年の2月段階では世界で40社以上、国内でも実に6社がこのサービスを導入していましたが、今ではトレーデンシー社に出資までしてしまった「インヴァスト証券」と「セントラル短資FX」以外には利用できる業者はなくなってしまったことになります。
多くの国内業者が静かに撤退
そもそも国内でこうしたシストレが流行りはじめたのは「アルゴリズム」による高速取引が市場で目立ちはじめた2010年ごろからになります。
個人投資家がチャートを見ながら目視で裁量取引をしても「アルゴリズム」に相場をかき回されて、とてもではないがトレードで儲けを出すことができない。といったあきらめの雰囲気が市場に出始めたときに、颯爽と登場したのがシストレで、これからは機械に売買してもらうのが新しいと利用をはじめた個人投資家が非常に国内にも多かったことが思い出されます。
当時はシストレといえばこのミラートレーダーか純国産の同様のトレードを提供する業者、さらに「MT4」と呼ばれる取引ツールにトレーダー自身が戦略(EA)を実装管理して売買を行うものなどが選択肢となりました。
しかし、純国産のシストレは戦略の数が限られていたことから流行らず、「MT4」も多くの業者が導入に踏み切りましたが戦略の提供が国内では非常に難しく、有償の戦略販売ソフトは投資助言業の資格をもたないもの以外違法と「金融庁」にダメだしされてしまったことから今ではFXTFとオアンダぐらいしか利用できるところがなくなってしまいました。
投資家が描く高度なシストレイメージとのギャップが大きな問題
この手のシステムが定着しなかったのは、ズバリ「戦略」と呼ばれる売買ロジックが顧客のイメージするAIを駆使したインテリジェント売買と程遠いものであたたことが大きな原因といえます。
ほとんどの戦略は「ミラートレーダー」であっても「MT4」用のものであっても戦略の制作者が一定の売買シーンを思い浮かべて、複数のチャートから特定の条件になると発せられる売買シグナルを利用して自動売買するのが基本となります。
相場の激変、経済指標の発表、要人の突然の発言、天変地異、「地政学リスク」など日常的に起こりうる突発的な事象に臨機応変に対応することなどはできず、稼動させると思わぬドローダウン(含み損)をかかえてちっとも儲からないという窮地にたたされたユーザーが多かったこともその評判を落とすきっかけとなってしまったようです。
「ヘッジファンド」などが市場で使っている「アルゴリズム」は、今流行りの人工知能を駆使していますから、2つか3つの異なるチャートから発せられる4時間足や8時間足など鈍い動きをみてからの売買シグナルの組み合わせが投資家の期待通りのビビッドな動きをするはずがないのは当たり前です。
とくに第三者がつくった戦略のソフトは、内容が細かく開示されていない典型的な「ブラックボックス」であるため、前週に大儲けしても翌週大損という出来の悪い博打のくりかえしに辟易とした顧客がヘビーユーザーであればあるほどこのシステムから去って行ってしまったのが衰退の大きな原因といえます。
その代わりにイフダンというきわめてわかりやすい機能をくりかえし利用する「M2J」の「トラリピ」のような仕組みが大人気になるのはよくわかる話で、中身はなんだかわからないがボタンひとつセットしたら知らぬ間に利益がでるという話がFXの世界では幻想であることをあらためて思い知らされる状況となっています。
(この記事を書いた人:今市太郎)