9月の後半から上昇をはじめたドル円は、既に9月27日から先週の金曜日までで14日の上昇となっており、今年に入ってから上がってもせいぜい平均の11日弱の上伸期間を超える動きになってきています。
すでにこのコラムにも書いていますようにファンドの解約にともなう資金捻出でドル円が買い戻されたのだとすれば今週からはドル買い円売りは影を潜めるはずで、果たしてそうした動きになるのかどうかが注目されます。
それとともに一部の金融機関のエコノミストから、米国債の金利はこれ以上あがらないとする見方も登場し、米国債金利上昇の賞味期限が問われることとなってきています。
HSBCは米国債金利上昇を真っ向から否定
HSBCのスティーブン・メージャーは、過去にも米国債利回りが低下することを当てた人物として市場での評価が高くなっていますが、同氏が10月4日のリポートにおいてここから5年間は米国債の利回りはこの水準より高くなることはないと予想し、相場の注目を集めはじめています。
9月に入ってから米国の複数の銀行が10年もの国債の金利が2%を超えるレベルまで上昇すると予想してきたこともドル円の上昇を支援する材料として機能してきただけに、すでに金利上昇の賞味期限切れ見通しが登場したことで相場の見方が二分されつつあることが明確になってきています。
市場では相変わらず12月の米国の利上げまで金利の上昇が続くと考えてきた向きが多いだけに、これにておしまいというメージャー氏の発言はかなり刺激的なものとなりつつあります。
ここのところ米国の株式市場の動向よりも10年債金利の上昇、下落にかなり追随するような形でドル円も上下してきていますから、ここからの上昇が見込めないとなると一旦はレンジ相場で日柄調整をするか値幅調整で下落することも視野に入れておかなくてはならない状況です。
テクニカル的には上方向のドル円は勢いがない状態
とにかく週明けのロンドンタイムから相場の動きをしっかりチェックしていくことが必要になりますが、ドル円の上昇を後押しする材料がかなり減少しつつあるだけに、米国10年債金利がここから上昇しなくなるとすれば一旦日柄調整で当面膠着状態に陥るか、値幅で一気に調整するとなれば102円方向への再下落がありうる状態となってきています。
またポンドの動きはドル円にも大きな影響を与えそうで、一旦落ち着いたかに見えるポンドは対ドルで1.052レベルまで落ちてもほとんどサポートラインがないところを彷徨っているだけに先週までの下落で一息ついたと思うのはかなりリスクが高そうです。
この1.052レベルというのは1985年の暴落時のラインということですから、古参の市場関係者以外は経験のない領域に入ってきており、そこまでいけばパリティに近い状態になることから、ポンド円も相当な影響がでることは必至で、ポンドがドル円を無理やり下落させる危険性も高まっています。
上記のグラフを見るとわかりますが、かなり尋常ではないところまで動きがではじめていますから、このまま終息するとは考えにくく、ポンドには投機筋がほとんど参戦していると見られることからオーバーシュート気味の結果を出す可能性も高まってきています。
足元の相場にはかなりの材料が並ぶようになっていますが、その中でもポンドの動きが結果としてもっとも大きく相場に影響を与えているところがなんとも気になります。
ポンド下落は少なからずユーロの下落も誘発していますから、クロス円全般に円高となり、ドル円だけがドル高を維持するのはかなり蒸すかしくなりそうです。
果たしてどのぐらいの押し目をつくることになるのかははっきりしませんが、意外にこれがドル円再度100円割れのきっかけをつくることだけには注意をしておきたいところです。
この記事を書いた人:今市太郎)