いよいよ年度後半の売買が始まっている為替相場ですが、4日には「GPIF」と思しき準公的機関がドル円を外債購入のために調達したことから、102円台まで無理やり押し上げられ、その後も103円に迫る動きが継続しています。
ただ年初から続く日足の一目均衡表の雲の上限を明確に抜けられているわけでもなく、この動きがさらに加速して上方向に行くことになるのかどうかはまさに微妙な段階にさしかかっています。
ところで、国内の金融市場では何に投資してもほとんど金利が期待できないことから、「GPIF」に限らず生命保険会社などの機関投資家がかなり積極的に「外国債券」への投資を行っているようですが、これまで為替変動による損失を回避するために、ヘッジでドル円を売るようにしてきたためヘッジコストも馬鹿にならない状態が継続していました。
しかし足元ではこのヘッジを行わないで「外債」を購入する向きが増えているようで、これが円高になりにくい状況を作り出し始めているようです。
一般的に外債の10年もの利回りが1.6%程度とすると、足元のヘッジコスト1.7%を支払えば元も子もなくなることから、ヘッジなしでの投資という冒険にでるところが多くなっているというわけです。
果たしてこうした丸裸のヘッジなし戦略が今後功を奏すことになるのか、円高で大きな損失をかかえて失敗に終わるのか、なかなか微妙なところにさしかかってきている状況にあります。
まさにここからのドル円が円高にシフトするのか今のレベルで収まるのか、はたまた再上昇を企てることになるのかの読み次第ということになりますが、現状で円高が終焉したとはなかなかいい難いのもまた事実であり、機関投資家の動きはドル円自体にも大きな影響を与えるだけにこのヘッジはずしが主流になるのかに大きな関心が集まることになりそうです。
100円近辺の値ごろ感はあるがドル円が下落しない保障はない
今年121円台からすでに22円以上下落したドル円ですから、足元の100円に近い相場状況は値ごろ感があって思い切ったヘッジなしの外債投資に踏み切ってコストをセーブする機関投資家が現れるのも不思議なことではありません。
年末に向けてはもう少し上昇することも考えられますから、ここで慌ててヘッジをつけて円を買う必要もないと考えるのも理解できますが、問題は本当に来年に向けてドル円が下落しないで今の水準を維持するのかどうかということになります。
米国はクリントン、トランプのどちらが大統領になってもドル円には厳しい状況が続くことが予想され、少なくとも95円程度までの下落は十分にありうる世界になりつつあります。
また100円を平均して維持できない時代が再来することも考えられ、こうしたヘッジなしの投資が本当に利益を出せるのかどうかがかなり気になるところです。
ヘッジをやめれば円安に動く可能性も
機関投資家が現在外債投資にほぼ全体の7割程度かけているヘッジをすべてやめていく動きになれば、それ自体が円高を阻止し逆に円安に押し上げる機能になる可能性があることは否定できません。
しかし「GPIF」などはもともと一切ヘッジを行わずに大損をこいているわけけすから、こうした動きがどれだけドル円の上昇支援材料として実際に機能することになるのかはよくわからない状況です。
また急激にドル円が円高に動いた場合、新たにヘッジをかけざるを得ないことも想定され、どんなに円高になってもヘッジを入れないのかどうかもかなり疑問です。
市場に「マイナス金利」が導入されてから銀行は本業では儲からなくなり「ドイツ銀行」のように余分なリスクの高い業務に手を出すところも増えていますし、機関投資家はとにかくイールドハンティングのために無理に「外債」に手を出すようになっており、想像以上に「マイナス金利」のネガティブな面が大きく増幅されはじめている感があります。
(この記事を書いた人:今市太郎)