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EUにベイルインを提案したのはほかならぬドイツ
もともとEUに対して国が「ベイルアウト方式」で金融機関を救済するのをやめるべきだと強く主張したのは、ギリシャ危機の際に余分な費用を捻出させられたドイツですから、今回お膝元の「ドイツ銀行」が破綻リスクに直面しているからといって、おいそれと「ベイルアウト」を口にすることはできないという事情がメルケルにあることは事実です。
またそうでなくても移民問題で首相の継続が危ぶまれている彼女にとっては、この「ドイツ銀行」をどう処理するかはかなり大きな問題になってきていることも事実です。
デリバティブの損失は決算書類だけからでは判断できない
企業がかかえる含み損などについては、通常ならば四半期ごとに作成される決算報告書をみればある程度の想像がつくものといわれます。
しかし、今損失が噂される「ドイツ銀行」の「デリバティブ取引」は、通常の定型型融資とは大きく異なり、オーダーメイド契約が主体となっていることから実態把握が極めて難しく、含み損が出ていてもそもそもの財務基盤がぐらぐらに揺らいでいるわけですから、清算して損失確定することすらできなくてかなり困っていることだけは事実ではないでしょうか?
まともに考えればドイツの監督官庁が見逃していた、あるいは放置プレーを継続させていたが故に起きたことですから、政府には何の責任もないとはいえないのが実情で、EC域内での「ベイルイン」の履行も手伝って、どのようにドイツ政府が対応するのかに非常に関心が高まるところです。
ドイツ銀行の破綻放置ならEU域内経済に深刻な影響
ご存知のとおり、EU圏は日本と同様に間接金融がさかんに行われていることから、EU圏でも圧倒的な取引実績を持つ「ドイツ銀行」がいとも簡単に破綻してしまえばドイツ経済のみならずEU経済にも多大な影響を与えかねない状況であり、「ドイツ銀行」から融資を受けている企業倒産に拡大するリスクもかなり高くなってきています。
ギリシャ問題に懲りて、他国の銀行への対応に関しては「ベイルイン」を強要したドイツ政府といえども、自国の「ドイツ銀行」の破綻を黙ってみているわけにはいかないはずで、何とかウルトラCが登場するのではないかという観測も出始めています。
ECBが銀行社債を買って難を逃れるのか?
そのひとつの解決法として噂されるのが、「ECB」による銀行社債の買い付けです。
問題は含み損になっているといわれる「デリバティブ取引」の損失がそんなことでなんとかなる規模なのかどうかということで、そもそも「ドイツ銀行」が破綻するのかしないのかよくわからないのもこれが大きな原因ですから、こうしたやり方でなんとかなるのかどうかが非常に気になるところです。
今のところ「ECB」は既に買い付けられる債券がなくなっていることから、銀行債を購入対象とすることは可能と思われますが、破綻寸前の銀行債などを購入して本当に大丈夫かという大きな問題が伴うこともまた事実です。
いずれにしても「ドイツ銀行」の問題は非常に透明性に欠ける部分が多く、引き続き投資家の不安を残す事象になりそうで、処理の仕方次第では大変な惨事が展開する危険と隣り合わせになってきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)