いよいよ米国大統領選挙のテレビ討論会がはじまり、米国内のみならずネットなどを通じてリアルタイムでの視聴ができることから、為替市場もその内容次第で相場が動く展開となってきています。
第一回目はクリントン候補がトランプ氏への攻撃で失言を誘う戦略に出る一方で、トランプ候補はできるだけ大統領らしさを意識し、普段の暴言を排除する動きに出ていますが、見かけからすると場数を踏んだクリントン候補に対して、トランプ候補の落ち着きのない小物ぶりが目立ち、討論会の途中からドル円が大きく買い戻される動きとなっています。
回を追うごとに言い争い主体に
このテレビ討論会は大統領選挙ごとに行われているもので、どのぐらいの視聴率になったかはこれからの発表を待つことになりますが、毎回、回を追うごとにお互いの攻撃を主体とする言い争いの場になることから、あら捜し主体のショーになることは間違いありません。
既存のオバマ政権への不満が燻る国民が多いだけに、政治家らしい半面インサイダーとして負い目も多いクリントン候補が批判合戦になったときに言い訳に終始せざるを得ない可能性もあり、ここからは目が離せない状況です。
ただ、今回もよくわかりましたが、トランプ優位となれば相場は「リスクオフ」の動きを見せ、クリントン優勢が維持されるとドルが買い戻されることだけは、どうやら間違いがようですから、ここから10月20日までは時差の関係から東京タイムでこうした動きが示現することが予想されます。
どちらが勝ってもドル安円高方向
ただ、ここから気をつけなくてはならないのは、トランプが勝てば「ドル安が明確に進むことになること」です。
ドル円は「リスクオフ」を含めて大きく円高に動くことは間違いなく、また日本に対してはことさら厳しい姿勢で臨む傾向があるクリントンが優勢になると、円安誘導に対する批判が大きくなることから、こちらも結果は「ドル安・円高」となる可能性が高く、この大統領選挙はドル円にとってはなんら上昇の支援材料にはならないものとなってしまいそうです。
経済指標の悪化で年内利上げ観測後退も円高材料
9月の「FOMC」では依然として年内利上げ意欲旺盛といった声明が発表されていますが、米国内の景気は自動車販売にかげりが出たり、住宅関連の指標でもピークアウト感が強くなってきていることから、利上げをさえぎる「経済指標」が年末に向けて発表されることも予想され、市場は一段と利上げ観測後退の見かたが強まりつつあります。
また今回のテレビ討論では一回だけ「イエレン議長」に対するトランプの攻撃発言がでていますが、今後の金利政策が討論の矢面にたってっくるとなると利上げ問題から「FRB」のやり方を巡って激しい意見の違いが出る可能性もあり、注意が必要になりそうです。
「ドイツ銀行」の破綻不安が銀行株全般に広がり欧州も米国もその株価が大きく下落する動きになっていますが、「FOMC」まであまり話題にならなかった「ドイツ銀行」の問題のノイズレベルが一気に高まる形になれば、大統領選挙と関係なく「リスクオフ」の相場にシフトすることが考えられ、ドル円がドル高にむけて大きく上伸する材料はさらに限られることになります。
9月21日の二つの中銀政策決定会合を通過して方向感にかける展開が続いていますが、いきなり持ち合いから一定のトレンドを示すことになる時期が近づいていることは意識しておくべきです。
いずれにしてもトランプ候補がまさかの勝利となった場合には、少なくともドル円は大きく円高に振れることになるのはほぼ間違いないようで、これが100円割れのレベルで円高になった場合には、まさかの90円レベルへの瞬間的な下落も覚悟しておく必要がありそうです。
ただ、その場合この秋最大の買い場になることも考えられ、売り場と買い場を十分に精査することが肝要な時期を迎えていることだけは確かなようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)