読み込み中...
しかし、7月末～8月初旬にかけて反転し、そのまま上昇傾向を続けています。追加緩和について検討されているのにもかかわらず、金利が上昇傾向を示しているのはなぜでしょうか。金利上昇の背景と影響を探ります。
マイナス金利政策下で長期金利が上昇する背景
「マイナス金利政策」がとられると、銀行の収益が大きく圧迫されます。実際、大手都市銀行を含め、多くの銀行株は、「マイナス金利政策」導入後、大幅に売られることとなりました。
最も、長期金利の上昇に伴って、ここのところ銀行株を買い戻す動きが強まっています。景気刺激策として取られている「マイナス金利政策」ですが、収益を圧迫される銀行からすれば、目の敵にしたい政策です。このことは日銀も十分に認識しています。
三菱東京UFJ銀行が「国債」の入札に優先的に参加する権利を自主返上するなど、低利回りの「国債」を敬遠する動きも出てきています。こうした状況を踏まえ、日銀としては銀行の収益を圧迫する「マイナス金利政策」等を徐々に修正するのではないか、との見方が市場で出てきています。
日銀が銀行の収益に配慮する形で政策を修正すれば、「マイナス金利」幅が縮小すると考えられます。この見通しを先取りする形で、市場での長期金利が上昇しているのです。
長期金利上昇の影響とは？
では、長期金利が上昇すると、どのような影響があるのでしょうか。まず、すでにみられている影響として、「銀行株の上昇」が挙げられます。
長期金利が再びプラス圏に戻るなどの状況になれば、さらに銀行株へのインパクトは大きくなるでしょう。また、為替に関して言えば、「米利上げ」の可能性が徐々に高まりつつありますが、日本の金利も上昇するとなれば、米利上げが日米金利差の拡大に直結しづらくなります。
日米金利差が拡大すれば、相対的に金利の低い円を借りて、金利の高いドル建て資産に投資するという円「キャリートレード」が活発化します。
日本における金利上昇はこの動きを抑えることになるので、円安・ドル高の抑制につながります。債券投資や銀行株投資をしていなくても、ここ1か月ほどの長期金利の上昇は為替への影響アリとして、しっかりと認識しておきたいところです。
今後の長期金利の見通し
では、今後の長期金利はどうなるのでしょうか。現在、上昇してきたとはいえ長期金利は依然としてマイナス圏に沈んでいます。
そして、日銀が「マイナス金利政策」を継続している以上、金利が大幅なプラス圏で推移する可能性は低いと考えます。日銀が「マイナス金利政策」を解除した場合ですが、これについてはまだかなり実現までに時期があるのではないかと思います。
最近の日銀会合では、追加緩和策を講じるか否か、追加緩和するなら内容をどうするか、といった議論がなされています。したがって、金融引き締め策となる「マイナス金利政策」の解除がすぐになされることはなさそうです。
インフレターゲット2％を、達成時期を先送りしながらも堅持している日銀の姿勢も考えると、政策失敗を認めたととられかねないマイナス金利政策の取り下げの可能性は低いのではないでしょうか。
こうした事実を踏まえると、今後の長期金利は小幅なマイナス圏で推移すると考えられます。
日米の金融政策により長期金利は不安定化か
日米の金融政策の差が次第に明確になってくるにつれて、金利も不安定化するのではないかと懸念されます。短期的に見れば、市場の思惑で日本の長期金利が上昇してきており、ここからさらに急激な金利変動は起こりにくい状況です。
しかし、金利のみならず、為替レートや株価についても市場が中銀の動向を大幅に先取りする傾向がみられていることから、市場予測が外れた際には大きなインパクトが生じ、市場が混乱することもあり得ます。
市場予測を踏まえた取引をすることは肝要ですが、予測に振り回されすぎず、冷静に中長期の流れを見つめることも必要ではないでしょうか。
