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25日からワイオミング州の山間部で開かれる「ジャクソンホール会合」は、日本で言うなら軽井沢のセミナーのようなもので、避暑もかねたロケーションとなており、これまでもどちらかというと学術的な内容が多い会議であったということができます。
しかし2010年の「バーナンキ議長」の時代に、この会合での講演で「QE2」を示唆したことから市場が大きく動き出したという経験があることから、今回の「イエレン議長」の講演でもなにか利上げに関するヒントがでるのではないかと、ある意味異常とも思えるレベルで世界的にその講演内容に関心が集まる状況となっているのです。
ただ、現実的な側面から考えますと、別に「イエレン議長」はこの場で何かを示唆することが必須となっているわけではありませんので、市場の期待とは裏腹にいつもながらの「玉虫色発言」に終始して、講演後の相場はがっかりという可能性も十分に考えられるといえます。
議長に近い人間の発言から察すると利上げへの言及が出る可能性も
ここから先の話はどこまで行っても憶測の域を出ませんが、ここ2週間あまり「イエレン議長」に近い関係者から「利上げ」に関してわざわざ発言が出ていることは注目に値します。
まず影の議長とも言われる「フィッシャー副議長」がかなり楽観的な経済見通しを口にしていますし、「FRB」のオペレーションバンクとも言われるNY連銀の「ダドリー総裁」も利上げに積極的な発言をしています。
またサンフランシスコ連銀の「ウイリアムズ総裁」も「イエレン議長」が総裁であったときの直近の部下ですから、代弁者としての発言をしている可能性が高く、日銀の「黒田総裁」と違って相場との対話を重視する「イエレン議長」が、今回利上げのアドバルーンを揚げて市場の様子を伺う可能性は十分にありうるといえます。
したがって利上げの方向感がある発言がでれば一時的にはドルが上昇することになりますし、何もその兆候が見られなければ、ドル売りかそのままの状態の維持という二種類の方向性が考えれることになります。
ドルが上昇してもドル円が上昇するかどうかは別問題
「イエレン議長」の口から利上げを示唆する内容が出たとすれば、確実にドルは上昇するものと思われますが、ドル円に関して言えば株価が下落を始める時点でドル安円高に反転する可能性が高く、単純にドル高円安がそのまま継続しないことも考えなくてはなりません。
現状のドル円相場の100円台中盤から後半程度で「イエレン講演」を迎えた場合、利上げポジティブ発言からドル円が上昇したとしても102円台を突き抜けて103円、104円と上昇するとはとても思えず、102円に近いところで折り返して売りになる動きも想定できます。
また利上げが明確に語られなくても、よほどのことを口にしない限りは、失望売りからドル円が大きく円高方向に下落するとも思えず、9月21日の「日銀政策決定会合」までさらにはっきりしない動きが継続することになるのではないでしょうか。
インフレターゲットや金利レベルなど基本的な枠組み再検証も
注目されるのは「イエレン議長」にきわめて近い存在であるサンフランシスコ連銀の「ウイリアムズ総裁」が、そもそもの「FRB」の「金融政策」のインフレターゲットやノーマルの利率レベルなどを見直ししてみてはどうかといった提案をしていることです。
これまでのようにまさかのときの「金融政策」のために景気が戻している時期に少しでも金利を上げておこうとする政策から、無理して金利を上げない方向に舵を切ることになれば、「FRB」による新たなドル安政策が示現することとなり、マーケットの反応も大きく変化することが考えられます。
しかしこうした大掛かりな枠組み変更をすぐに「イエレン議長」が開示するとも思えず、大きな変化はまだここから年末に向けて徐々に明らかになっていくことが予想されます。
世界的に事前の期待が高いだけに「イエレン議長」講演から明確な手がかりを市場は求めている状況ですが、あまり期待せず、事前に方向を明確に予想するより、登場した結果を基にして次なる売買戦略をとることがお勧めとなります。
(この記事を書いた人:今市太郎)