内閣府が発表した日本の4~6月期実質国内総生産(GDP)1次速報は、前期比プラス0.0%(市場予想はプラス0.2%)、年率プラス0.2%(同プラス0.7%)と「ロイター」がまとめた市場予想を下回っています。
GDP統計をめぐって日銀と内閣府が乱闘寸前の茶番劇
ところで数字が悪いことに苛立ったのか、自らの政策が機能しないことに頭にきたのかよくわかりませんが、ここへきて日銀が内閣府の発表した「GDP」の内容に反旗を翻すレポートを発表して市場では話題になっています。
先ごろ「日本銀行」が14年度の実質経済成長率がプラスだったとするリポートを公表し「GDP」統計の在り方に疑問符を投げ掛けたのです。当然「GDP」のエキスパートを自認する内閣府は、この内容に黙ってはおれず大きく反論するなど内部抗争が激化しはじめています。
この日銀によるリポートは「税務データを用いた分配側GDPの試算」と題し、日銀調査統計局の藤原裕行企画役らが連名で7月20日にウェブサイトで公表したものです。
それによると、14年度「GDP」は内閣府の公表額より29.5兆円多い519兆円となり、実質成長率もマイナスではなく2.4%のプラス成長になったという内容になります。
まあこれではぜんぜん結果が違うだろうということになりかねませんが、14年のデータを計算しなおして今頃、日銀が出してくるあたりにその意図が見え隠れします。
米国のNFPといい「GDP」の速報値といい先進国の「経済指標」はブレまくりのデータが多く中国の捏造数値をほとんど笑えませんが「日本よお前もか」という状況がいよいよ示現しはじめており、この内輪モメがどう決着をつけることになるのかが非常に注目されるところです。
結果がでないことに焦りを感じている表れか?
日銀が自らの視点と手法で「GDP」を検証しなおして発表するというのはとにかく異例のことですが、そこまでして数字を出してくる背景にはやはり「金融緩和」に成果がでてこないことへの焦りが感じられることは間違いありません。
海外メディアはすでに9月の「日銀の政策決定会合」では枠組みを見直すことにより、あからさまではないにせよ、なにか緩和措置を後退させるような新たな枠組み提示をするのではないかと見ているようで、実は海外系のファンド勢もそうした消極的なプランが提示される可能性を見守っているようです。
もちろん国際的な体面もありますから「緩和やめます」などとは口が裂けても言えませんが、目標値をいじったり時間軸をなくしたりして自ら緩和措置を後退させると思っている市場参加者が多いところも気になる部分です。
もちろんこれで緩和後退と市場が見なせば、相場は大きく売られることになり、株も為替も下落は必至です。
株式市場だけが上ブレを期待
株式市場だけはやけに前向きで日経平均はここから2000円~3000円の上昇が期待でき、海外の投資家も大きく資金を戻してくることを期待しているようですが、円高が進み企業収益も圧迫し、過去3年間の努力のない利益拡大分を吐き出さざるを得ない状況の中で、日経平均だけが大きく戻されることを期待するのには無理があります。
少なくとも為替に関しては、株と連動せずに円高方向にさらに調整するリスクを考えておく必要がありそうです。もちろん株価が下落するときには必ず為替も連動することになりますので、さらに注意が必要になります。
相場のことですから絶対ということはありませんが、ここ3年間人為的に価格を調整してきた相場には限界が感じられるようになっており「ECB」も日銀も既に「金融政策」ではこれ以上相場をコントロールできなくなっていると市場はかなり強く感じています。
このことは「FRB」もどうやら感じているようで、利上げに強気になれないひとつの要素にもなっているようです。相場がこの秋上昇するか下落するかは9月に入って米国の投機筋が本格的に戻ってくる段階でかなり明確になるのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)