今年も8月15日の日本で言うところの「終戦記念日」がやってこようとしています。
しかしこの時期、韓国やインドなどを訪れていると、この日の前後が独立記念日であったりして欧米の列強からやっと独立できた日で日本が戦争に負けたことをよしとしている周辺国が多いという厳然たる事実を改めて認識させられることになります。
今を生きる日本人にはもはやリアリティはなくなっていますが、アジア諸国から見ると8月15日は日本の「敗戦記念日」であることは明白です。
人類は過去の教訓をまったく活かせずに、何度となく大規模な世界大戦を繰り返してきたのがここ250年あまりの歴史となっていますが、実は世界的な「デフレ」を戦争で克服してきたという暗い過去があることも忘れてはなりません。
デフレ克服不能のたびに起きた世界大戦
高度成長期に生まれ、生きぬいてきたものにとっては「インフレ」はあっても「デフレ」は簡単に起こらないと思われていたのが1980年代でしたが、日本は先進国の中でもいち早く「デフレ」に陥り過去25年近くここから脱出できずに、今もぎりぎりのラインを彷徨い続けています。
しかしこの世界的な「デフレ」は1800年代から何度となく起きており、なんと人類はこれまで「世界大戦」というとんでもない「大規模公共事業」でそれを克服してきた歴史を持っています。
古くは1812年の米英戦争の前も「デフレ」がひどく、1812年から14年末までイギリスの植民地と米国との間で戦争が起こっています。その簿1840年代も米国は深刻な「デフレ」が進みましたが、その直後1854年にCivil War・南北戦争が勃発しています。
このあたりまでは世界戦争というよりは地域紛争でしたが、1900年代に入ってからやはり世界的に深刻な「デフレ」が起こり、第一次世界大戦で先進国はこれを克服することになります。
そして世界恐慌が起こり、その後1937年米国が経済の復興度合いを見誤って迂闊に利上げをしたあたりから急激なリセッションになり、またしてもデフレが進行しましたが、これまた第二次世界大戦が勃発することで大きくその状況を克服することになります。
戦争をせずにデフレを克服する方法が見つからない世界
EUというのは、欧州大陸で過去200年以上にわたってドイツを軸とした国と周辺国との戦争を起こさせないために、フランスとドイツが中心になって作り出した地域連合といっても過言ではありませんが、英国の離脱に端を発してその存続がいつまで続くかわからなくなりつつあります。
またグローバリズムをもっとも推進し世界の国々を巻き込んできた米国は「トランプ」のような保守主義の候補がまさかの高い支持率を獲得するようになっており、オバマが無理やり推奨しようとした「「TPP条約」も「ヒラリー・クリントン」でさえ反対を表明しており、太平洋圏経済交渉もあえなく終了を迎えようとしています。
自国通貨安を実現させ「金融緩和」を行えば株価は上昇し「デフレ」は克服できるとしてきた、リフレ派の実証実験台になってしまった日本も、3年続けて「金融緩和」したものの2%の名目物価上昇すら実現のめどが立たず、欧米のメディアからは日銀が9月に緩和政策から大きく後退する措置を表明するのではないかという憶測が飛び交いはじめています。
グローバルデフレをグローバルな力で克服するという試みはどうもうまくいかないようで、ここからの時代はその巻き返しの動きが顕在化してきそうな気配濃厚です。
多くの著名投資家が「株や債券投資から撤退すべき時期が来ている」と警鐘を鳴らしている話は既にこのコラムでもご紹介していますが、多少マクロ的に引きの視点で見た場合には、世界経済がもはやその枠組みを変貌せざるを得ない状況にさしかかってきていることを強く予感させられます。
金融市場の世界では8年から10年に一度性懲りもなく大暴落が起きて、多くの投資家が悲惨な状態に追い込まれるのがひとつのサイクルになっていますが、またこうした厳しい市場の激変でゆがみを自律的に矯正しようとする時期が迫っているのかもしれません。
9月から10月に向けては、やはり上方向へ上昇するリスクよりも明らかに下方向に下落するリスクに十分な注意を払うべきタイミングで、ここからの妙な強気は大怪我のもとになる可能性があることだけは意識していただきたいと思います。
「ファンダメンタルズ」に関する予感だけではFXは勝てませんが、それをフィルターにしてチャートをじっくり眺めると必ず利益になるエントリーポイントが見えてきます。8月後半にかけてはそうしたポイントとめぐり合う時期になってくるのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)