18日から開催されていた米国・共和党の全国大会で、正式に「トランプ氏」が正式の大統領候補に指名されることになり、いよいよここから本格的に米国の大統領戦況が金融市場でも織込まれていくことになります。
問題はここからのトランプ発言の市場への影響
これまでの予備選挙ではかなりむちゃくちゃな発言をして会場を沸かせる存在であった「トランプ候補」ですが、ここからは大統領候補として政策に織込む話を公言することになり、発言の重みがかなり変わることになります。
とくに為替市場に関していいますとトランプ、クリントン両陣営ともに強いドルなどは一切望んでおらず、比較的攻撃しやすい日本円を引き合いに出しながら「ドル安」を口にする可能性がかなり高まっているといえます。
そのため、両候補から為替相場に関する発言がでるたびに「アルゴリズム」が反応して、思わぬところで円高が示現するといったことにもかなり注意が必要になってきそうです。
とくに日本を想定して、何か具体的なことをまくし立てることになると、これまでにはなかったようなことでもドル円が売られて円高になるケースが現れることも考えられ、非常に注意が必要になりそうです。
トランプの経済政策は日本顔負けの金融緩和とバラマキ
トランプ候補は既にかなりの「金融緩和」と「バラマキ」をその政策でも公言しはじめており、実はウォールストリートの反応も決して悪くない存在になりつつあります。
一部のアナリストによれば、トランプ政権になると「NYダウは爆騰するのではないか」という期待もではじめており、メキシコとの間に大きな壁を作るなどといった話を別にすれば、意外に支持者が多い状況とも言われます。
それだけに米国内での動きと海外の市場が見たドルの動きは多少異なるものがでてきそうで、海外サイドから嫌気されて売り込まれるといった動きにもここからは注意が必要になりそうです。
そもそも正式な共和党の大統領候補になったことで、トランプ発言がどのぐらいトーンダウンしてくるかにも大きな注目が集まります。
実際大統領になれば多くの政策スタッフをかかえて、これまで口にしたエキセントリックな考え方は影を潜めるのではないかとの期待もされていますが、全体として新自由主義の逆さまを行く存在であることは間違いありませんので、日本が思わぬ攻撃対象になることも考えておかなくてはなりません。
一方クリントンもかなりの対日強行主義者
「トランプ候補」に比べれば比較的わかりやすい存在である「クリントン候補」も対日政策ではかなり厳しい存在であり、特に為替に関して言えば日本を名指しにして攻撃してくる可能性はきわめて高い存在です。
共和党・民主党両候補の論戦の行きがかり、上候補から、日本や日本円が攻め上げられる存在になりかねないことも相当気にしておく必要がありそうです。
「G20」の財務相・中央銀行総裁会議は今月23日から2日間、中国・四川省の成都で開かれ、日本からは「麻生副総理兼財務大臣」と日銀の「黒田総裁」が出席する予定ですが、それに先立って、またしても米国のルー財務長官は自国通貨安誘導をけん制する発言をしはじめております。
つまり、日本の「為替介入」は依然としてまったく可能性がないことを示唆するような動きになりつつあります。
今のところ一旦はドル円の相場水準は落ち着いてはいますが、円高が終わったわけではなく、ここから迂闊に介入をすれば、トランプ、クリントン両候補から大統領選に絡んで猛烈な批難を浴びる可能性もあり、本邦の通貨当局も手出しができないのが実情ではないかと推測されます。
大統領選挙は11月18日までの長丁場となりますので、ここからの為替の動きにはこれまで以上に神経を使ってチェックしていくことが望まれます。
選挙はとにかく水ものですから、UKのEU離脱に次ぐ形で、まさかのトランプ政権が誕生したときに、為替相場が一体どれぐらいそれにネガティブな反応を示すことになるのかも気になるところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)