この7月後半は「ECB」から始まって「FOMC」「日銀政策決定会合」とまたしても「中央銀行」の政策決定が続く2週間となりますが、21日に開催される「ECB理事会」では、UKのEU離脱を受けてさらなるECBの追加緩和期待が高まってきています。
対米ドルではユーロ売りもつみあがっており、かなり市場は折込み始めている感がありますが、果たして「中央銀行」が期待するような形に相場が動くのかどうかが非常に注目されるところとなってきています。
それというのも既に「ECB」の緩和政策には手詰まり感があり、材料出尽くしイメージが広がれば為替相場は買い戻しになる可能性があるからです。
昨年から今年にかけての2回のかなり大掛かりな「金融緩和」を実施したにも係らず、市場の期待にとどかなかったり「ドラギ総裁」の出尽くし発言で大きく買い戻されるなど、緩和自体が相場をまったくコントロールできなくなっているところが非常に気になる部分になってきています。
果たして今回は三度目の正直として、政策当局の期待どおりに相場が動くことになるのかどうかがポイントになってきそうです。
過去4回のマイナス金利深堀ではその都度金融株が売られる結果に
「ドラギ総裁」は「マイナス金利」の金融機関への影響はほとんど無いと口にしていますが、結果論からいえば「ECB」が「マイナス金利」を深堀した過去4回の緩和のたびに、金融株は大幅に売られることとなっており、市場はまったく同様の評価をしていないことがよくわかります。
既に一部のファンド勢は中央銀行主導のバブルは既に終わっているのではないかとも見ており、相場の状況が悪くなると過剰に「中央銀行」の緩和措置を期待するものの、実際の緩和策がでても満足できずに結局買い戻しが入る、の繰り返しがかなり顕著になりつつある点が非常にリスキーな状況になってきているといえます。
日銀も今年に入ってから何もしなければ売られ、緩和をしても結局売られるという悪循環に陥っており、市場があっと驚くようなポジティブサプライズを「中央銀行」がもはや出してこられない状況が、かなり鮮明になりつつあるのです。
日欧ともに債券購入はすでに限界に達しており、残るは「ヘリコプターマネー」のような特別な錬金術の領域に踏み込まざるをえない状況です。
今回の「ECB」の緩和措置で市場が思うように動かないとなればいよいよ中央銀行バブルも終焉という見方が強まる可能性もでてきています。
欧州は銀行リスクも抱える状況で予断を許さない
7月29日は「日銀の政策決定会合」に注目が集まりますが、同日、欧州銀行監督局(EBA)によるEU加盟国の主要51銀行を対象にした「ストレステスト(健全性審査)」の結果発表も行われる予定となっています。
イタリアでモンテパスキ以外の銀行が不合格になれば、当然銀行への信用は大きく失墜することになりますし、取り付け騒ぎになりかねない状況ですが、市場がさらに心配しているのはイタリアの銀行ではなく巨額のデリバティブを行っている「ドイツ銀行」の存在です。
すでに「FRB」が実施した米国における「ストレステスト」では「ドイツ銀行」は不合格を喰らっており、同様のテストが欧州域でドイツ銀行に不合格を出した場合、一定以上の相場の動揺が示現することは間違いなく、ここからの欧州市場はかなり重要な局面にさしかかっていることを忘れてはならない状況です。
まかり間違えば「リーマンショック」の次にくる大きな相場下落は欧州銀行関連起因になる可能性は十分にあり、ここからの相場状況ではかなり慎重な売買が求められることになります。
イタリアの銀行などとは比べものにならない負債を抱えた場合ベイルイン方式で投資家や預金者などが損失を補填することになればパニック状況なることは間違いなく、この夏の欧州相場は想像以上にリスクが一杯になりつつあります。
したがって、直近ではまずは21日の「ECB理事会」を受けて相場がどう動くのかに最大の注目をしていきたいと考えます。
(この記事を書いた人:今市太郎)