参院選の終了した11日の週、本来なら選挙後材料出尽くしで下落もあるのではないか?と見られた日経平均もドル円も猛然と上昇をはじめることとなり、ドル円は実にこの5日間で、最大5.6円近くまで一方的に上昇することとなってしまいまいした。
その大きな原因となっているのが、海外勢による日本の「ヘリマネ」実施への過度な期待ということになります。
さすがに週末ポジションの巻き戻しなどもあって終値は104円台に落ち込んだドル円ですが、週明けは最近異常に激しく動くようになった東京市場がお休みということもあり、この間にまたしても仕掛け売買がでるかどうかが注目されるところです。
ところで本邦勢の目から見れば、7月の中旬のレベルから「ヘリマネ」を含む「財政政策実施期待」で買い上げが進んでしまっても、果たしてここからこの水準がどうやって維持していくことになるのか、いささか心もとない相場の動きになってきてしまっています。
多くのトレーダーがここまで「ショートカバー」が進むとはほとんど思っておらず、意外に買いを入れられなかった一週間ではなかったかと思われます。
ヘリマネ期待への抑止力となるのか黒田発言
Photo 時事通信
もともと「バーナンキ元FRB議長」を日本に呼び寄せたのは本田・元内閣官房参与であることは明白で、「バーナンキ」・「黒田総裁」の会談で何が話し合われたのかは不明ですが、この時期に「ヘリマネ」以外の世間話だけしたとは到底思えない状況です。
しかし「黒田総裁」は国会でもメディアのインタビューにおいても 空中のヘリコプターから地上にばらまくように国民に直接資金を配るような「ヘリコプターマネー政策」を否定しております。
日本を含む先進各国では財政政策は政府、「金融政策」は中銀が担う仕組みが確立していると指摘し、「現行の法制度の下では実施できない」と、かたくなに否定し続けてきた経緯があります。
ただ「マイナス金利」も実施直前まで国会答弁でありえないといいながら、いきなり実施したサプライズの実績がありますので、どこまで鵜呑みにできるかも問題となるわけです。
ヘリマネによる資金捻出を常態化させれば歴史に残る最悪の人物に
「安倍総理」は参議院で3分の2の多数を確保したことで、あらゆる人気取りで支持率を維持、上昇させながら2018年には国会で改憲案を通過させ国民投票で一気に成立に持ち込もうとしています。
それだけに経済音痴でありながら見栄え感だけは気にする総理が「ヘリマネ」で打ち出の小槌の錬金術を頻発させて、この間に最大利用していく可能性は極めて高く「黒田総裁」が個人的にはヘリマネに否定的でも、法律を盾にとってどこまで本当にその実施の防波堤になりうるのかが注目されるところです。
直近で市場に大きなインパクトを与えるのは29日の日銀政策決定会合
Photo Reuters.com
「ヘリマネ」に期待する海外の「投機筋」もさすがに29日の「日銀の政策決定会合」でヘリマネがいきなり登場するとはさすがに思っていないと思いますが、29日には午後3時半から定例の記者会見が実施され、当然のことながらヘリマネや永久債の買取に対する質問が集中することが予想されます。
政策決定会合の結果が見送りとなっただけでもそれなりの失望売りがでるものと見られますが、その後の記者会見で「黒田総裁」がきっぱりヘリマネ実施を否定した場合「アルゴリズム」の反応を含めてそれなりの失望売りが出ることはほぼ間違いありません。
ここでの同氏の発言が非常に重要になってくるものと思われます。ここまでほとんど何の確証もないままに6円近く上昇したドル円ですから、黒田発言でもとに戻っても不思議ではないところです。
月末まではきっちり2週間ほどの時間がありますので、このまま株も為替も上伸を維持するのかどうかにも関心が高まりますが、大きなゆれ戻しがでるとすればこの29日ということになりそうで、これにあわせてどう売買を仕込んでいくかについて今のうちにしっかり考えておきたいものです。
⇒ ヘリマネ騒動で俄然注目を浴びるアデア・ターナーのIMFへの提言 (2016.7.17)
⇒ ヘリコプターマネーの本質・永久債利用による恐怖の錬金術 (2016.7.15)
⇒ バーナンキがヘリコプターマネーを「そそのかしに」やってくる (2016.7.9)
⇒ ヘリコプターマネーをめぐってもめるECB理事会に注目 (2016.4.19)
(この記事を書いた人:今市太郎)