「安倍晋三首相」と今週、官邸で会談した「ベン・バーナンキ前FRB議長」が、今春に訪米した前内閣官房参与の本田悦朗氏との間で、永久国債発行のアイデアを議論していたことが報道されて、ドル円はいきなり暴騰することとなりました。
しかし、その後「浜田内閣官房参与」が、「バーナンキ前議長」は「ヘリコプターマネー」について、少なくとも浜田氏の同席した場面では発言していないと「ブルームバーグ」の電話取材に答えたことが報道されて、逆に大きく下落する動きとなっています。
ただその後「BOE」が金利を現状維持としたことから、ドル円も大きく値を上げ、すでに106円に定着しようかという動きになりつつあります。
永久債の投入はヘリマネの本質的問題
市場は外国人投機筋を中心に「ヘリマネ」の投入を好感しているようですが、当初は景気が上向くことがあったとしてもオリンピックが来る前ぐらいまでには問題がおきはじめ、「インフレ」を制御できなくなることはほぼ間違いないものと思われます。
ある意味で日本は欧米からの「ヘリコプターマネー」を薦められるところまで追い込まれているといっても過言ではない状態です。
「中央銀行」が紙幣を増発して財政赤字を直接ファイナンスするか、「中央銀行」が既発債を買い入れ「バランスシート」上に「ゼロ金利」永久債として計上して事実上両建てで固定するかのいずれかの方法以外には錬金術は存在せず、特に時の政治家にこのハンドリングの権利を与えてしまえば、とめどもない世界に陥る可能性は間違いないと思われます。
欧米のエコノミストは規律あるヘリマネの導入で小出しにやるべきだと提言していますが、「自分の名前をつけて経済政策をさも総合的であるかのように振舞う」経済音痴のどこかの首相がいるような国に、この錬金術を導入するのは危険以外のなにものでもない状態を引き起こすことになってしまいます。
さすがの浜田参与も歯止めが利かなくなることを指摘
Photo Reuters.com
「浜田氏」は「ウォール・ストリート・ジャーナル」とのインタビューで、政治のため私欲のため、政治家がお金を自由に刷って使えるというのは誘惑が大きすぎると指摘して、そのリスクの大きさを認めています。
「ゼロ金利」の永久債を発行しては、日銀が買い入れて金庫にしまったきり元金の返済も行わないなどというトンでもない手法を導入して、経済が活性化していい国になるとは到底思えないわけで、このようなスキームは小学生が聞いても話が変であることはすぐにわかるはずです。
本田悦朗氏が永久債を口にしたのは本当にやる気なのか、あるいは「バーナンキ」との話の中で登場しただけなのかが気になるところですが、相場的にはさらに「ヘッジファンド」の思惑買いで上昇する可能性があります。
どこまでついていくかはかなり悩ましいところですが、一旦は円買いの相場が終了したと見たほうがよさそうな動きになってきています。
どこかでまとまった失望売りがでることには要注意
ただし、この「ヘリマネ」は今回の10兆円の大型財政出動で、どこまで登場していくるかは依然としてよくわからないところにあり、今後の日銀の動きによってはとんでもない失望売りを引き出すこともありえそうです。
その第一段階になると思われるのが月末の「日銀政策決定会合」で、市場の期待に応える形での緩和措置が出てこないと結構激しく売られる危険が高まっています。
相場の動きはすでに政治的な世界に陥っており、チャートを見ていてもレジスタンスラインを超えるかどうかしかチェックポイントがなくなっている状況です。
とにかくレベル感だけで売り向かうのは一旦封印して、どこまで相場が上げるのかを丁寧にチェックしていく必要がありそうです。この動きは必ずどこかで剥落することになると思われます。
(この記事を書いた人:今市太郎)
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