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このコラムでも「ドイツ銀行」をはじめとして、欧州の金融機関の動向が突然怪しくなってきていることをお伝えしています。
イタリアで先行して破綻が危惧されている「モンテ・パスキ」なる大手銀行に公的資金を入れるべく、イタリア政府は「ECB」に打診中となっていますが、実は今年、2016年の1月からEU域内の金融機関の破綻に関しては「ベイルイン方式」を履行することが法律で決められております。
このモンテパスキにも適用されることになるのかどうかが、ファンド勢を中心として金融市場で大きな注目を浴びているのです。
そもそもベイルインって一体何だ？
Photo GQ Italia
これまで日本でも金融機関が破綻するときというのは、国が多額の税金を投入してこれを救済するのが基本とされてきました。
これが「ベイルアウト制度」と呼ばれるもので、欧州でもこの方法が主流となっていたのです。
しかし2015年末にはEUの全加盟国は金融機関再生、破綻処理のために「ベイルイン制度」、つまり投資家の資金や株主の資金、ならびに顧客の預金や債券を使うことで銀行が救済される方式に変更になってしまっているのです。
仮に今回イタリアの「モンテ・パスキ」の救済になったときに、このベイルイン制度が適用になるのかどうかを「投機筋」は非常に関心をもって見守っているといいます。
言ってみれば欧州型の徳政令みたいな話ですから、債券保有者や株主がどのような負担になるのかを非常に興味を持って見ているということになっているのです。
2013年のキプロスの金融危機には一旦ベイルインが履行されており、ロシアの投資家が大きな損失を被りましたが、イタリアのケースでどのような判断が下され、だれがもっとも負担を仕入れられるか次第では金融資本への投資からかなりのお金が逃げていくことも考えられ、非常にここからの動きが注目されるところです。
現状で決められているベイルインの対象と対象外について
Photo Reuters.com
「ベイルイン」は、以下の債務については適用が除外されますが、一般のシニア社債に係る債務を含むそれ以外の債務に広く適用されることになります。
(a) 預金保険システムで保護されている預金
(b) カバードボンド等の担保付債務
(c) 顧客からの預かり資産や受託資産に関する債務
(d) 満期が７日未満の短期債務
(e) 従業員に対する給与・年金やその他の固定報酬の債務
(f) 金融機関の日常業務に必要な備品やサービスに関する債務
(g) 税金等の債務
(h) 預金保険システム上の保険料債務
ただし、破綻処理当局の個々のケースごとの判断により、以下のいずれかの場合についてはベイルインを適用しない例外的措置をとることができるとされているのです。
■合理的な期間内にベイルインの処理を行うことができない場合
■金融機関が主要な業務を継続するために欠くことのできない機能を維持する観点から、適用除外が必要不可欠な場合
■個人や中小企業等の預金につき広範囲で悪影響が広がり、金融市場が機能不全に陥り加盟国の経済に深刻な混乱が生じることを防ぐために不可欠な場合
■ベイルインを適用することによって当該債務の価値に壊滅的な悪影響が生じ、他の債権者の負担する損失が適用を除外した場合よりも増大する場合
このように破綻処理当局が一部の債務について例外的にベイルインの適用を除外した場合、その不足分を填補するために、ベイルインが適用される他の債務について元本減額や株式への転換の割合を増やすことができるとされています。
なかなかこれだけの条文を見ただけでは敬虔に判断できないことがお分かりになると思います。
つまり実際に履行する段階で結構弾力的に運用されることから、誰が一番損をすることになるのかがまだよくわからないというのが正直なところだと思います。
この「ベイルイン方式」を強く望んだのはドイツだと言われていますが、ひょっとするとこの先「ドイツ銀行」の破綻にも履行される可能性もあり、市場の関心は高まる一方になってきています。まずは「ECB」の判断がどうなるのかに注目していきたいところです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
