当然のことながら「英国のEU離脱」が決まればこの逆張りは大失敗に終わることになりますが、それにもましてこうしたポジションの積み上げが事前段階で明らかになったことから、23日を待たずに一旦ポンドが対ドルでも下落すれば、ドル円も下落して結果としてポンド円が振り落とされる可能性がでてきています。
「投機筋」は人のもっとも嫌がることをするのが定石になっていますので、ぎりぎりの世論調査などをきっかけにして一旦大幅下落の仕掛けをしてくることになれば、投票前に巻き込まれるリスクが高まっているといえそうです。
日常的に上下幅の大きなポンド円取引ですから、悪意をもった「投機筋」の手にかかれば、せっかくの国民投票後の結果を前にストップロスをつけさせられかねない、かなり嫌な雰囲気になってきているといえます。
もともと流動性がないポンド円だけに片方に傾いたポジションは危険そのもの
東京金融取引所のFXくりっく365が公表している個人投資家のポンド/円のポジションは、6月16日時点で売り建て1万8234枚に対し、買い建ては約15倍の27万5209枚に達しており、明らかにロングが積み上がりすぎています。
一旦下落がはじまると買いしか市場にいないポンド円はまさかの10円以上の下落にもつながりかねない状況が差し迫っていることになります。この動きにドル円がまきこまれた場合には、最低でも2円から4円程度の下落は免れなくなりますので、足元の104円から考えると100円を下抜ける可能性もではじめているということになってきます。
しかし冷静に考えて見ますと、ここから莫大なリスクを負ってドル円で4円獲得を目指すことを考えれば、現状維持なのに売り込まれた先週木曜日の「日銀の政策決定会合」の後のドル円相場の下落などは実にリスクの少ないディールだったことが改めてわかります。
ドル円が100円と聞くと参加しないわけに行かない気分にはなりますが、さしもの「ヘッジファンド勢」も、もっと楽して取れるタイミングに相場に突っ込んで利益を上げていることに今更ながらも感心させられる次第です。
リスクとのバランスから考えればより楽にとれるタイミングを狙うべき
ポンド円が160円以上だった時期から「スワップコスト」に耐えながら、ショートポジションを維持し続けているのであればまた話は別になります。
しかし、直近の相場レベルでロングをとってもショートをとっても、それにかかるリスクから考えますと、丁半博打に限りなく近い状況であり、レバレッジを大きく下げて無理してポジションをとったとしても、それに見合うだけのものになるかどうかはかなり考えなくてはならない時期にさしかかっているといえます。
こうした一世一代のイベントにFX投資家がどう取り組むかということは、それぞれの投資家のマインド、ならびにFXでどう利益をあげるかにも大きく絡む問題ですが、やはり勝算の確証が得られるときにポジションを持つことが結局相場に生き残る大きな方法ではないかと思います。
確かにうまく当てれば大きな利益機会を得ることができる相場状況だからこそ、なんとか参加したいという気分もよくわかりますが、すべての相場のプロセスの結果から見た場合、もっと楽に同じような利益がとれる瞬間も出てくる可能性は高く、最初から無理をして参加する必要もないのではないとも言えるのです。
相場で常にリスクをとりつつある「ファンド勢」も、あらかじめ売りや買いでポジションを持たないようにしているところに個人投資家とは異なるリスク管理法が存在していることを強く感じます。
果たして今回の「英国の国民投票」ではどういう取引をすることが最も勝算の高いものになるのか、あらためて考えさせられます。
(この記事を書いた人:今市太郎)
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