米国の利上げ時期と英国のEU離脱騒動のおかげで、ほとんど話題にならないのがギリシャの債務問題ですが、今年もこれまで再三先延ばしにしてきた債務問題が浮上する時期が近づいてきています。
ギリシャ議会は5月24日のユーロ圏財務相会合を前に、債権団から法制化を要求されている「増税・改革法案」を153-145の僅差で可決して、なんとか首の皮一枚のところで負債負担軽減の余地判断の場にのることにこぎ付けています。
ユーログループは24日に会合を開き、2015年半ばに交わされた支援合意に伴う条件の同国の順守状況について評価を行うことになっていますが、10年以降に実施された2000億ユーロ(約24兆7300億円)超のギリシャ向け融資の返済条件緩和に向けて、ユーログループが前向きな評価を下すかどうかが大きな焦点になってきているのです。
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7月に債務支払いが集中
ここのところほとんどメディアでも話題にならないギリシャの債務問題ですが、毎月それなりの返済が続いているものの、7月には国債償還を控えて、大きな借金の返済と債券の乗り換えが求められることになります。
ギリシャの10年債国債利回りは2月にかけて10%を超える水準にまで高まりましたが今のところ7%台にまで下落して推移しています。
難民問題ではギリシャの協力が必要不可欠であるため、これまで強硬姿勢にでてきたドイツも柔軟な姿勢に変化しつつあり、「IMF」がどこまで譲歩するかがポイントになってきています。
英国のEU離脱問題ですっかり漁夫の利となったギリシャ
金融市場というのはたとえ同じ問題であっても世界的な経済環境は周辺諸国の状況などにより評価がかなり変わってくるものですが、ある意味でその典型的な例になりつつあるのがギリシャの債務問題です。
昨年の今頃となんら状況は変わっていないにも関わらず、いまや欧州圏では英国のEU離脱が最大の問題になりつつあり、ユーロ圏のメルトダウンを回避するためにギリシャについては大目に見る動きが非常に強まりつつあります。
こうした中で債務減免についても話し合いが行われることから、ギリシャにとってはかなり有利な展開が継続しそうな状況です。
今ユーロ圏では英国の離脱が決まれば、フランスもイタリアもスペインもといった動きが加速する寸前のところまで来てますから、あえて分解につながるような動きはとらないというのが基本になっているようで、どうやら今年の7月についてはギリシャの債務問題から「デフォルト」騒ぎが再燃することはなさそうな状況です。
冷静に見れば「借金したもの勝ち」の雰囲気がかなり強くなってきていますが、これも金融相場ではよくある話であり、特に為替の世界は「ファンダメンタルズ」に忠実に動く部分と、市場の相対的な関係からテーマにならないケースが混在していることになることがよくわかります。
逆に言えば、日本にいるとわかりませんが、英国のEU離脱問題はそれだけ大きなもめごとになっているということで、これが万が一離脱多数となった場合には、我々が想定している以上に相場が荒れることを想定しておかなくてはならないことを感じます。
TNSが17日公表した調査によると、英国がEUを離脱すべきと考える割合が残留すべきと考える割合を3%ポイント上回り、当然ポンドは売られることとなりました。
調査は5月10~12日に実施し1222人から回答を得ているものですが、それによると離脱派が41%、残留派が38%で、まだ決めていない、が21%ということから、まだまだこの先どうなるのかはわからないというのが正直なところです。
大きく儲けられるのならばポンドの売買をしてみようと誰もが思うところですが、この数字を見ると迂闊に買っても売っても踏み上げや下落の的になりかねず、離脱リスクを考えればドル円を売り持ちにしていてもそれなりの利益にありつけそうなところとなっています。
とにかく今年の7月に関しては、ギリシャ問題はまったくテーマにならないことだけは明確になってきているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)