本邦勢だけに妙な期待が高まった「G7」仙台先進国蔵相、中央銀行総裁会議でしたが、一応無難な声明は出たものの、為替に関しては日本の金融当局と米国財務省側の考え方は完全な平行線に終わりました。
一応、「過度な為替の変動はよろしくない」という言葉は載っていますが、肝心の過度の集合論的なレベルの定義は最後まで埋まらないまま終焉を迎えることとなりました。
きっぱりと無秩序的状態を否定したルー財務長官
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日米財務相会談は、最終日の「G7」財務相・中央銀行総裁会議の討議前に行われた模様ですが、結果的にはなんの歩み寄りも見ることはできず、米国側からは無秩序と言うにはハードルが高いといった、けん制発言も飛び出し、日本の金融当局は「円売り介入」の正当性を引き出すことに完全に失敗する形となっています。
今後も「麻生財務大臣」は犬の遠吠えのように「円高には断固として介入も辞さず」を繰返すことになるのでしょうが、今回内弁慶を完全に露呈させる形となってしまい、日本の円高介入は、よほどのレベルまで急激に動かないかぎり、まったくできないことを再度市場に強く印象付けてしまった感があります。
また「安倍総理」の外遊時には調子のいい友好的発言を繰返していた「オランド大統領」のフランスは、やはり単なる外交辞令であったようで、今回「G7」に出席したサパン財務相は、為替市場に「ファンダメンタルズ」との乖離はみられないとした上で、「為替介入」の必要性は見当たらないと指摘し、円売り介入を主要国にエンドースしてほしい日本の動きを完全にけん制する発言を繰り出しています。
整合性のとれない金融政策を打ち出す米国
4月の「FOMC議事録」の公表で、いきなり6月利上げ説が有力になってきている米国ですが、「FRB」の動きとルー財務長官率いる財務省との動きにほとんど整合性が見られなくなってきています。
本来利上げならば、ドルは上昇すべきところですが、米国の財務省は徹底してドル安を演出しようとしており、この二つを考えてもまったく「ファンダメンタルズ的」なつじつまは合わなくなってきています。
「FRB」としては今のうちに少しでも利上げをしておき、この先の「金融政策」で利下げをうまく使っていきたいということなのでしょうが、米国全体としては株価を下げないためにもドル安は堅持したい、しかも今年は大統領選挙でその動きがきわめて強くなることも予想されます。
こうして考えて見ますと、6月にもし米国が利上げに踏み切っても、材料出つくしでドル円は下落する可能性もあることを考えておく必要がでてきている状況にあるのです。
ドル円は引き続き円高方向を注視
ドル円は「投機筋」の円ショートがほとんど減っておらず、下げるにも下げられない状況が続いていますが、112円台程度まで戻したとしても115円に届くのは、よほどの「オーバーシュート」がない限り難しく、伊勢志摩サミットの結果や6月「FOMC」、「日銀政策決定会合」でまさかの追加緩和などがあったとしても上伸レベルはかなり限られることになりそうです。
逆に下落方向は、一旦107円レベルがサポートとなる可能性があり、その下が前回GW中の下値の105.50円レベル、これを抜けると102円が視野に入ります。
直近では材料難から買いも売りもはっきりしないもみ合い状態が続いていますが、引き続き「実需」の売りがびっしり並ぶ110.500円から上はしっかり様子を見ながら売り場を探していきたいところです。
この先のドル円の下落要素としては6月23日の英国のEU離脱をかけた投票結果、また7月の共和党全国大会での「トランプ候補」の正式決定があり、中国金融市場の不穏な動きなども下落の要因としてうごめく形になっています。
今回の「G7」仙台の結果を受けて、海外の「投機筋」は国内における参議院選挙対策が出尽くしたところが最大の売り場と考えていますから、夏に向けて大きな下落を狙える場面が必ず到来しそうな相場となりつつあります。ドル円は引き続き円高方向を注視することが大きな利益につながりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)