『日銀は将来の金融緩和の「出口」で保有国債に損失が生じる事態に備え、2015年度に初めて4500億円程度の引当金を積む。これに伴い日銀の利益が目減りし、15年度に政府に納付する金額は大幅に減少する。単年度でみれば量的・質的金融緩和(異次元緩和)のコストが国民に転嫁されることになる。』
という報道が、アジア版の日経に英語で掲載され一時「110.500」円超水準まで続伸したドル円は40銭近く下落してNYタイムを終えました。
いよいよメディアに登場しはじめた出口戦略の問題
先日ブルームバーグの観測記事をきっかけにして、結果的に大暴落を示現させてしまったドル円ですが、今回は誤訳にはなっていないものの、外国人勢が見れば出口戦略を考え始めているのかと詮索しかねない書き方であり、海外の投機筋の週明けからの動きがきわめて気になるところです。
日銀は異次元緩和による購入で膨らんだ国債の利息収入の一部を、引当金に積める制度を15年度につくっており、今回はこれをもとにして引当金を4500億円積む考えとされています。
「黒田総裁」は物価目標の達成が難しくなれば、追加金融緩和を辞さない考えを示していますが、新たな引当金は異次元緩和の出口を見据えた布石という報道から、追加緩和の先行きがそれほど長くないことを暗に示唆する書き方となっており、前回のブルームバーグ報道後の市場の勝手な期待や解釈が再現されることになれば、週明けからのドル円は大きく下落する可能性も出てくることになります。
財務省・日銀にとって最大のリスクは金利の上昇
ご存知のように、すでに日本が発行している国債は1100兆円規模にまで膨れ上がっていますが、これでもギリシャのように破綻しないで済んでいるのは極度に金利を低く抑え続けているからで、ある意味このことが政権の財政出動などの錬金術を生み出しているともいえます。
しかしこの金利が4%にもなれば、年間の国家の税収のほとんどを「国債」の利払いに充てることとなり、大変な事態が起きることになります。
なにより国内で国債を保有している金融機関などが耐え切れなくなって「国債」を売り始めれば国内発で暴落が起きる可能性すらでてくるわけで、日銀が「金融緩和」を止めます。と言った途端に市場は大混乱に陥ることはほぼ間違いありません。
しかも損失のための引当金を積上げ始めたという話は穏やかではない内容です。
デフォルトかハイパーインフレ以外には解決策のない日銀の出口
日銀には果たしてどのような「出口戦略」があるというのでしょうか?
日銀が国債の購入をやめるとなれば「マイナス金利」でも10年債を日銀の買取期待から買ってきた本邦の金融機関は当然こうした債券を売りに回ることになる為、出口戦略は全く簡単ではなくなっているのが実情です。
事実上「入口あって出口なし」なのが今の日銀が直面している状況であり、そもそも出口論が登場するだけでもかなり市場には様々な思惑が働くことになります。
「アベノミクス」が単なる日銀による金融抑圧に過ぎず、しかもきわめて財政ファイナンスに近い内容であることを考えると、ここからの出口論の話に市場の関心が移ることは、かなりリスクの高いものになっていくことが容易に想像されます。
またヘッドラインの翻訳の仕方次第では、さらにその流れに油を注ぐことになりかねません。
ちなみに21日は水星の逆行が順行に戻る時期であり、しかも満月ときていますから、アストロ的には円高の特異日となっており、仙台「G7」でなにかよろしくない内容がでれば週明けのオセアニア市場はそうでなくてもギャップダウンから始まりそうな嫌な状況となっています。
今回の日経新聞の報道は、日銀の決算発表に伴う周辺報道の域を出ませんが「投機筋」の売りを誘うなんともよろしくない内容となっていることだけは間違いなく、今後の市場の反応が気になるところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)