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1バレル50ドルを超えることは「今後当面ない」とされてきた原油の先物価格が加熱気味に上昇しつつあり、すっかり状況が変化つつあります。これはいくつかの事象が重なり合って生じているものであり、この流れが続くことになるのかどうかが大きく注目されるところです。
相場は常に変化するものですが、原油市場の変化はかなり大きなものであり、短期間にこれだけ状況が変わるのは正直なところかなりの驚きです。
現在原油先物相場を上昇させているのは「カナダ」、「ナイジェリア」、「ベネズエラ」といった全く異なる３つの地域の問題でああり、これがほぼ同時に起きていることから原油価格は大きく戻りを試す形となっているのです。
「米国FOMC」の6月利上げにも大きく影響を与えるファクターだけに、この先の動きを注視することになりそうです。
カナダの山火事が大きく影響
カナダの西部アルバータ州で発生した大規模な火災のおかげで、ここ2週間で原油生産の3割近くが停止することとなり、日量120万バレルの損失がでていることから「WTI原油先物」は期近物で、ほぼ7ヶ月ぶりの水準まで上昇を続けており、その動きは加熱感をもったものになっています。、
山火事は砂岩から原油成分を抽出するオイルサンド産地のアルバータ州を直撃している模様で、この流れは当分続きそうな状況です。
ナイジェリアの石油施設破壊も影響
一方ナイジェリアは5月4日にシェブロンのオフショア・リグが自称ニジェール・デルタ・アヴェンジャーズ（NDA）という武装グループに襲撃され、5月11日には同国内の別のシェブロンの施設が爆破されています。
ロイヤルダッチシェルは同国での操業を停止、外国人社員を引き揚げたことからナイジェリアの原油生産は1990年代初頭の水準にまで急減しています。
ナイジェリアの原油生産は236万バレル/日で世界シェアの2.7%を占めているだけに、原油価格に大きな影響を与え始めており、こちらも先物価格を大きく上昇させるドライバーになってきています。
NDAはどのような存在なのかいまひとつよくわかっていませんが、これが長引けばさらに価格に影響を与えることになりそうです。
国内政治の混乱は原油の精製にも影響を与え始めており、こちらも「WTI」の原油価格に深刻な影響を与え始めています。
目先は1バレルあたり60～70ドルへ回復も
原油市場は「一寸先は闇」といった印象で、年初の状況とは大きく様変わりをはじめています。
原油価格の上昇は米国の株式市場を高値安定に導くとともに、ドル安継を続させることからこの動きが今後どうなっていくかが非常に注目されるところですが、米国の今後の利上げタイミングにも大きな影響を与えるだけに今後の動きがどのようになっていくのかが非常に気になるところです。
カナダは自然災害に起因する問題ですから、簡単には回復がはからる可能性がないと思われますが、ナイジェリアやベネズエラは人為的に発生している事態であるだけに、状況が改善されれば、生産が再開される期待が残るところです。
また、原油価格の上昇は日本の「貿易収支」にも大きな影響を与えることになることから、今後の価格推移が気になります。
ただ一時的な需給の変化が価格に影響するとはいえ、供給に対する需要の減少は間違いなく、今後こうした価格の上昇がどこまで続くのかが大きなポイントになりそうです。
価格が上昇すれば減産という話も立ち消えになる可能性が高く、長期的な視点で見た場合にはまたしても需給のバランスを崩すことも考えられ、今後の価格推移も注視すべき状況になってきています。
（この記事を書いた人：今市太郎）
