13日に「ロイター」が発表した、米国S&P総合500社指数採用企業の、2016年第1四半期は前年同期比で5.4%の減益見通しとなりました。
既にこれまでに500社中459社が、第1・四半期決算を発表していますが、このうち、利益がアナリスト予想を上回った企業の割合は72%になっております。
これは長期平均の63%と、過去4四半期の平均である68%をともに上回っており、よくよく見ればそれほど悪い水準ではないのですが、とにかく前年同期比で下落し始めていることに対して、嫌気する動きもあり、大統領選挙も近くなっていますから、ドル高円安が政治的な標的になる可能性もでてきており注意が必要です。
第2四半期はさらなる悪化を予測する企業も増加中
2016年第2・四半期の1株利益について、悪化もしくは市場見通しを下回ると予測している企業は49社、改善もしくは市場見通しを上回ると予測した企業は21社で、徐々に先行き見通しの悪化を予測する企業が増加中です。
すべての企業収益は為替によって悪化したものではありませんが、製造業に大きな影響を与えていることだけは確かなようで、トランプ、クリントン両候補も日本は欧州よりも叩きやすい存在であることから、「円安けん制」が強まることも視野に入れておく必要がでてきているようです。
また株価が低迷すれば、慎重な「FRBイエレン議長」も簡単には利上げに踏み切れないことになり、こちらもドル安を維持する材料となることは間違いなく、ドル円を支えるものはほとんど存在しなくなって来ていると言えます。
国内の貿易赤字の完全解消で実需的にも円安はサポートされない状況
一方、「財務省」が5月12日発表した2015年度の国際収支速報によりますと、輸出額から輸入額を引いた「貿易収支」は6299億円の黒字となり、5年ぶりに黒字に転換することになりました。
2011年3月の東日本大震災以降ずっと「貿易収支」はマイナスに展開し、年間では一時13兆円を超えるマイナス額を示現していた時期もあったわけですから、大幅に改善したことがわかります。
「貿易赤字」がでるということは買切り玉でドル円を買う「実需」が13兆円存在していたことになるわけですから、日本株買いをするためヘッジで年間15兆円近くドル円を買い支えた「海外投機筋」の動きを付加すれば28兆円分の買いが2013年「アベノミクス」スタート時には存在したことになります。
現状の外資系ファンドの積極的日本株買い意欲の減退を含めて考えると、かなりの金額がドル円買いから姿を消している現実がわかります。
「原油価格」は一旦下げ止まっていますが、ピーク時から考えればかなり安く推移していますので、こちらも「貿易赤字」の大幅解消に寄与する材料となっており、この黒字転換は原発の再開などが進めばさらに大きなものとなる見込みです。
総合的に見るとドル円は上昇する要因が限られる
この二つの要因だけ見てもドル円は、年後半に向けて大きく買いあがる材料が乏しく、参議院選挙に向けた総動員の政策対応で株につられて上がるタイミングがあれば絶好の売り場到来となりそうな状況です。
とくにこのままでいきますと、参院選後における株の下落と為替の大幅下落が危惧されるところで、選挙さえ終われば政治家は誰も株価や為替を気にしなくなることから、大きく落ち込むタイミングが到来することも想定しておきたいところです。
もちろん、その他にもドル円に影響する要因は数多く存在する2016年夏以降の相場ですが、上伸をサポートするような材料は日に日に少なくなってきており、今の為替水準が定着してしまうことも予想されます。
ゴールデンウイークに105,50円近くまで下落した相場ですが、今年これが底値とはまだ思えない状況で、どこかのタイミングを見計らって、大きな下押し展開に巻き込まれないように、ここからは逆張りも注意が必要となりそうです。
特に外資系のファンド勢は参議院選挙後の焦点をあわせて、戻り売りの場を探し始めていると言われますので、この夏は高値ではつねに売りを模索しておくと大きな利益にありつける可能性があるかもしれません。
(この記事を書いた人:今市太郎)