連休中から、米国財務省のけん制をもろともせず、麻生財務大臣や安倍首相が再三「為替介入」を示唆し続けています。10日の参議院予算委員会で麻生大臣が「断固」としてという言葉を使ったことから為替市場は一段と「為替介入」に対する警戒感を強め、ドル円はなんとまさかの109円までレベルを回復することとなりました。
4月22日以来日米財務省の見解は大きく食い違い
ご存知の通り先月22日に開催された「G7財務相会談」のときに米国ルー財務長官が言い出したドル円は秩序だって動いているという発言は、先般の日本を名指して「為替介入」監視国としてノミネートして報告書の中身とも整合性がとれており、米国政府が一貫してドル安を強く志向していることがはっきりと窺えるようになりました。
しかし日本サイドは一貫して米国政府の理解が得られているとか、たいした問題ではなく「為替介入」はできると再三市場にすごんでみせる場面が現れ始めています。
これが二枚舌の内向きコミュニケーションに過ぎないのか、それとも本当にやる気なのかの判断がいまひとつできないといったところが今の状況といえます。
この連休も臨戦態勢を敷かせた首相官邸
政権と日銀に不協和音があることは「前回のコラム」でも指摘しましたが、市場から聞こえてくる話では、この連休期間中も「財務省」は日銀に働きかけて、いつでも「介入」ができる臨戦態勢をとったことだけはどうやら間違いないようです。
しかし、実際の介入ということになりますと、やはり米国の承認を得ることが必要になりますから、麻生大臣が感情的になりながら口走る売り言葉に買い言葉のような内容ではそう簡単に実現できないこともまた事実です。
秩序立っていない動きというのは、1日に3円以上大きく下げ、2日で10円といった異常事態になることが必要で、日常的に1円程度は動くことも珍しくないドル円では1.5円ずつ下げるといった程度では秩序が崩れたことにはならないといえます。
またこうした介入は価格の押上ではなく、あくまでスムージングといって急激な相場を止めるだけですから仮に介入で2~3円上昇したところはまたしても絶好の売り場として機能してしまうのがこれまででも多く見受けられました。
ただ、長く為替に関わる「インターバンクディーラー」に言わせると「断固」といった言葉が連呼されるようになると本当に介入するケースが多いので、今回は念のため、ドル円を買い戻している向きが多い可能性が高いようです。
米国を押し切って介入してもたいした制裁はないとの見方も
ただ、市場では、無理やり「介入」しても、米国政府から大きな制裁を受ける可能性は低いとの見方もでています。
とはいうものの米国は大統領選挙の真っ只中であり、日本を叩きやすい環境にあることも事実で、そうでなくても尋常性を欠く「トランプ候補」と、もともと日本叩きの名手である「クリントン候補」の格好のターゲットとなることは間違いないことから、本当にこの時期理解が得られなくてもそこまでやるのかどうか?に大きな関心が集まっています。
とくに今、介入をすれば「伊勢志摩サミッ」トでその件が議題に上がることは間違いなく、すくなくとも「財務省の役人はやりたいとは思っていないはずです。
首相官邸は選挙対策のためになんでもありで対応しようとしている気配濃厚ですが、為替に関してどこまで他国相手に突っぱねた動きをできるのかがかなり注目されることになります。
これで逆に張子の虎が露見すればどこかでまた大きく売り込まれることは必至で、ここからの動きが非常に重要になりそうな状況になってきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)