3月、4月と比較的落ち着いた相場が続いた中国市場ですが、ここへ来て今度は株式市場から債券市場にリスクが飛び火しそうな状況が顕在化しつつあります。
5月4日にブルームバーグが報じたところによりますと、中国債券市場で今年中国企業が償還しなければならない社債規模が、3兆7000億人民元(約65兆8363億円)に達する見込みであり、このうちのかなりのものが償還できずに「
デフォルト」に陥るリスクが急激に高まってきているという内容でした。
上海の株価は3000ポイントを挟んでいったり来たりであまりぱっとはしませんが、人民元も大きく下落することはなく比較的落ち着きをみせてきた中国市場だけに、ここで債券価格が大きく下落することがあれば、他国の相場に与える影響も大きくなるのは必至で、またしても中国市場の動きから目が離せない状況が続きそうです。
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既に伝統的な重工業系の企業では社債償還ができないところも
足もとで債券償還リスクに直面している企業はひとつやふたつには留まらないようで、中国伝統産業群に属する企業に非常に多くなっています。
金属、炭鉱業などで上場してはしまったものの、実態は借金をして既存の借金を返済しなければ事業が立ち行かない、いわゆる自転車操業の企業が続々とあぶりだされることになってしまっているというわけです。
国の支援が未来永劫続くと勘違いした個人投資家
2015年6月の上海株式相場の暴落以降特に株から債券に資金を移す個人投資家が増えてきているようで、これまで償還時に資金が足りなくても中央や地方政府からの支援が受けられたため、株式市場より債券市場のほうが確定利回りで安心と決め込んだ個人投資家が、こうした市場を膨れ上がらせる結果となってしまっているのです。
このため昨年だけでも企業は3兆6000億ドルも新たに社債を発行することとなっており、今後も償還すべき社債は次々とやってくることになるわけです。
外人投資家への規制緩和も火に油の状態
中国政府は2月24日に外国人投資家の債券市場への投資を大幅に緩和し、世界的に「マイナス金利」でイールドハンティングに必死の外国人投資家が中国の債券市場になだれ込んだのも大きな問題となりつつあります。
海外投資家による中国債保有は、この3月に2.4%増え6800億元(約11兆6500億円)にまで達することとなりましたが、その後、中国の国債と社債の相場は急落し、国債利回りが月間ベースで大きく上昇し、完全に高値掴みをした状態が示現してしまっています。
中国政府は劣悪な企業の粛清を表明しているが
中国政府はいわゆる「ゾンビ企業」と呼ばれるような借金自転車操業の企業をこの際粛清して合併や取り潰しに動こうとしているようですが、債券市場自体がおかしくなれば広範な上場企業の債券償還にも影響がでることは間違いなく、債券相場の暴落から始まって株式市場にその余波がでることが懸念されはじめています。
かなり条件が揃ってもなかなか利上げしない「
米国FRB」はこのあたりの事情を察知しているのかも知れませんが、一息ついたようにみえる中国の金融市場は、まだまだリスクの火種を水面下で温め続けていることがよくわかります。
昨年の6月の上海株式相場の下落は結果8月に為替も暴落するような事態につなっがっていたわけですから、中国債券市場のバブル崩壊が現実のものになると相当な影響がでることは覚悟しておかなくてはならなくなりそうです。
株式相場もここからさらに下値を追う形になる可能性は十分に考えられ、この夏に向けての中国市場の動向を注視すべき時期がやってきているようです。
「
米国FRB」は簡単に利上げを行わないと思いますが、ここで6月などに利上げしてしまうようなことがあると、世界的に相場は大きな下落リスクに直面することも考えられ、非常に心配される状況になってきています。