米国の大統領選挙というのは過去に遡っても実にいろいろなことが起きているものですが、共和党ではトランプ氏の最大のライバルであったクルーズ上院議員が正式に撤退を表明したことから、「ドナルド・トランプ氏」が共和党の大統領候補として指名される可能性が高まりました。
この段階ではまだ共和党の候補に過ぎませんが、トランプ氏が大統領として指名されるのも、もはやまさかの事態ではなくなってきている状況で、トランプ候補が大統領になった場合においての、相場の反応を真剣に考える時期にさしかかってきていることを感じます。
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新債券王ジェフリーガンドラックはトランプ政権に備えよと訴え
この状況にいち早く反応したのが、新債券王として昨年から数々の相場状況を当ててきている新債券王ことダブルラインキャピタルCIOの「ジェフリー・ガンドラック」です。
同氏はアイラ・ソーン投資カンファレンスの席上、「トランプ氏が次期米大統領に就任した場合に備えるべきである」と呼びかけ注目されました。
ガンドラック氏の見方では、トランプ政権になった場合、レーガン政権に似た政策を取るのではないかと予測を出しており、具体的には様々なインフラ投資で債務を増やす政策に打って出るのではないかという見方と示しています。
トランプ候補に対する評価は二分
トランプ候補者に対する市場の評価は、かなり二分しているといえます。
ご本人の発言から考えればとんでもない存在であるとする説がある一方で、マーケティング的に行っているに過ぎないので実際に選出されれば、俳優のレーガンが勤めたよう、それなりにそつなくこなすのではないかとの見方も根強くあります。
当初は拒否反応がでるかと思われた「ウォールストリート」近隣でも、意外なことに支持者が増えている状況にあるといわれます。
このあたりのセンチメントは実際にアメリカにいて有権者になってみないとよくわからないところも多いようですが、トランプ政権の可能性は徐々に高まりつつあるとみてよさそうです。
オバマへの失望がトランプに向かわせている米国社会
オバマ政権が誕生した当初、黒人大統領ということで米国の歴史を塗り替える大きな変化が起きたと全世界が思ったわけですが、蓋を開いてみると、それまでの政権と大きく変わることはなく、戦争にもたくさん参加していますし「チェンジ」という言葉だけが独り歩きして、国民の満足感はほとんど得られないまま8年の歳月が過ぎようとしています。
米国ではこの間に貧富の差はさらに大きくなり、中間所得層のかなりの部分が姿を消すことになり、持ち家比率も大幅に下がって、かつてのアメリカ人と今の状況とに大きな乖離が生まれていることは確かです。
この不満が募る上昇を変えられるのは「ヒラリー・クリントン」ではない、とする向きが増えていることだけは確かで日本から大統領選を見ている、いわば外野の層が抱くイメージとトランプ候補に対する期待の現実には、結構乖離が生まれ始めていることだけは間違いないようです。
7月18日には正式にトランプ候補が共和党の統一候補として選出される見込みですが、当初はこの段階から相場は嫌気してドル売りを進めるのではないかと見られていたものの、必ずしもそうした動きにならないことも想定しておく必要がでてきているようです。
ただ、いずれにしてもオバマ政権の誕生時よりもはるかに変化の大きな政権が誕生する可能性は高く、「ジェフェリー・ガンドラック」が指摘するように、実際の政権が誕生したときのシュミレーションを行う時期がやってきているともいえそうです。
翻って自国の状況を考えて見ますと、よく内容のわからない、単なる金融抑圧政策にしか見えないものに自分の名前をつけていかにもすばらしい経済政策が動いているかのように振る舞い、とにかく憲法改正のためにあらゆる手段を尽くして選挙に勝利し、その後の経済状況などどうてもいいと思っているどこかの総理大臣を考えれば、トランプ氏だけがむちゃくちゃに変な存在とは言い切れず、実際の政権が動き始めれば結構オーソドックスなものになってしまうのかも知れません。
ただ、為替相場の視点でみると米国市場と世界市場のインサイトがどのようなものになるのかをしっかり見極めないと迂闊にはポジションを取れなくなってきていることだけは確かです。
(この記事を書いた人:今市太郎)