ゴールデンウイーク、ドル円の下落ばかりが目につく状況ですが、そんな中で独特の動きをしているのがポンドです。
オバマ大統領が訪英したあたりから、様々なメディアの調査、ならびに英国人が大好きな賭けのサイトでもEU残留の数字のほうが大きかったため、この間ポンドは対円を除いてはかなり手堅い動きを継続してきたのです。
しかし日本時間の3日の夕刻あたりから急激に下落が始まり、市場を驚かせることとなりました。
ただ、国民投票まで8週間となってはきているものの、ポンドの上下変動要因は必ずしもEU離脱をかけた投票に集中しているわけではないようで、あまり断定した売買をしないほうがよさそうなムードになってきています。
国民投票まであと8週間と迫ったこのタイミングで、我々はどのようにポンドを取り扱っていけばいいのかについて考えてみました。
3日の下落の原因は製造業PMI
英国では「製造業PMI」が3年ぶりの低い水準となりました。このポンド下落は、この数字がここまで悪くなることは予想範囲外だったことに反応したものですが、結構まとまった下げになっており、EU離脱がなくても様々な材料でポンドは大きく動くことをあらためて実感させられる相場となっています。
この材料では大きく下げたわけですが、逆に大きく上がることもあるわけで、EU離脱にだけフォーカスしていくことがかなりリスキーであることを思い知らされます。
スコットランドの離脱投票とは動きが異なる可能性も
英国のEU離脱については、投票前にかなりリスキーな世論調査が登場して一旦大きく下げ、投票直前もしくは出口調査の結果で離脱回避の見通しから大きく買い上げられ、結果をうけてまた下落といったスコットランドの独立住民投票のときのような動きを期待する向きが多く、対ユーロでもドルでもポンドを売り持ちにしてきた層が多かったと思われます。
結果はまだわからないものの、どうも今回はそうした動きが明確にでておらず、意外にポンドが買い進まれていることがわかります。
だからこそ「製造業PMI」などでも大きく値を下げることになったわけですが、どうも今回については、2年前のスコットランドのケースをそのまま当てはめて、決め込みで売買をするのは危なそうな雰囲気になってきています。
英国の外にいて、国の状況が手に取るようには把握できない我々にとっては、今回のEU離脱をかけた国民投票については細かい国民のセンチメントをリアルタイムで感じ取ることがかなり難しいことから、あまり早くに断定してしまうと、とんだ想定外の材料で相場の上下に巻き込まれかねない状況にあることは、しっかり認識しておく必要がありそうです。
乱高下のお楽しみはまだこれから
ただ、こうした妙に落ち着きのある相場状況もいよいよ直前にさしかかっての世論調査の状況次第ではかなり大きく揺れ動くことになるのは間違いなく、ここで安心しきってしまうのもまたリスクをことになってしまいます。
米国の「FOMC」はわざわざこの英国の投票結果を受ける形で会議の日程をずらすほど気を使っていますので、何が起こるかはわからないのが実情です。
英国に詳しいトレーダーによれば、開票速報の前の出口調査の結果はかなり信憑性が高いようで、「ロイター」の欧州版TVなどを見ていち早く情報をつかんだ上で、ポジションをつくるといったやり方がどうやら間違いのないものになりそうです。
日本で報道されている情報ベースではあきらかに遅いようですから、そのあたりをどのように情報をとって対応するかが大きな課題です。
結論からいいますと、あまり早めに断定的な発想でポンド売りを仕込むのではなく、ぎりぎりまで待って確実な情報を手にしたところでポジションをつくることが重要になりそうです。
また反転の動きがすぐにやってくることも容易に想像できますので、ある程度利益がでたらそのつどリカクして利益を確実なものにするこまめな努力も必要となります。
通常のFXよりかなり博打に近いのがこうした選挙睨みの売買ですから、ポジションをあまり大きく持たないというのも基本的な発想としてもっておくべきでしょう。
(この記事を書いた人:今市太郎)