年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の高橋則広理事長は26日、「ロイター」のインタビューに答えております。
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巨額の資金に為替ヘッジをかけると発言
「GPIF」の「ポートフォリオ」見直し以降、外貨建て資産の割合が増加した。資産保全に向けてどう対応するのか?という「ロイター」の記者からの質問に答えて、高橋理長は、
1.為替変動による価格変化の幅を少しなだらかにするような形で、為替ヘッジが使えればと思っている。
2.全くヘッジしないということでは、恐らく国民の納得が得られないのではないかと考えている。
3.ドル、ユーロ、第三国の通貨も含め、すべての通貨を平等に対象として考え、ヘッジコストも踏まえたうえで(円高・円安)上下両方のリスクに備える。
と答えています。
実際のところ、これまで「GPIF」はほとんど為替のリスクのあるものにヘッジをかけてきたとは思えないわけですが、現状で為替が絡むものは全体の40%にも及んでおり、これに等しく為替ヘッジをかけるとなると巨額の資金が為替に投入されることになってしまうわけです。
出典:GPIFホームページより
これが本当なら大変なアップダウン相場がやってくる
均等に為替についてはヘッジすると言うのは簡単ですが、最初からすべてヘッジしていたのでは利益を大きく圧迫することになるわけですから、為替が変動し始めたときにヘッジを行うことが基本になってくるものと考えられます。
外国株式や債券はドル建てやユーロ建てなどいろいろなものが考えられるでしょうが、ドルベースで30兆円といった金額になった場合に本当にその分をすべて為替ヘッジできるのかどうかについては、相当疑問を持たざるを得ないというのが正直な感想です。
たとえば今年のように115円が切れて110円方向に走り始めた場合にはGPIF」もヘッジのために市場と一緒になってドルを売り円を買うことを示唆しているわけです。
もちろん全額のヘッジができないとしても円高局面ではこれまでのように相場を支えるような形で「GPIF」がドル円を買うという行為は登場しない、しかも逆に相場に順張りでついていくことを示唆しているわけです。これは、かなり極端な相場の動きを形成するのではないかと誰しもが思う内容です。
こうした「GPIF」の為替ヘッジは理事長が言うように、なだらかなものになるとは到底思えないかなり激しい動きとなる状況が示現しそうです。
しかも逆にどこかで円高から円安に転換した場合には、それまでのヘッジを順次為替水準の戻りにあわせる形で外していくことになるわけですから、いきなり円安が加速し、猛烈な円安を示現することもありうるということを示唆しているわけです。
東日本大震災後の「貿易赤字」が年間13兆円強でかなり円安に寄与したことは記憶に新しいものとなっていますが、その2倍、3倍の規模の為替ヘッジを「GPIF」が本当にかけはじめるとなると、とくにドル円はこれまでの相場とは異なる極端な動きが出る可能性が強くなりそうです。
実際本邦勢の銀行を総動員しても、そこまでの為替ヘッジのドル売り円買いなどができるものなのかどうかが見ものとなりますが、少なくとも「GPIF」起因で、これまでの国内投資ではありえなかったような動きが為替の世界に現れることになりそうで、今後相場が大きく円高にふれたときの動きが注目されます。
基本的に言われていることが間違っているとは思いませんが、現実性の問題ではかなりクビをかしげる発言であることは確かです。「インターバンク」の連中は一体この高橋理事長の発言をどう思ったのかぜひ聞いてみたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)