12月から過去2回に渡って「金融緩和」を実施しながら市場を制御できずに大きくユーロがショートカバーを起こしてしまうという失態を招いている「ドラギECB」ですが、その「ECB理事会」がいよいよ22日に迫ってきており、今回もどのような動きになるのかが注目されています。
さすがに3月に大規模な「金融緩和」をぶち上げただけに今回はすぐに追加緩和が実行されるとは市場も想定していないようですが、問題は「ドラギ総裁」が前回理事会で関心を示したヘリコプターマネー実施の成否をめぐってドイツとの反発が激化することに関心が高まりつつあります。
日本国内ではあまりたいした話としては報道されていませんが、ドイツでは国民レベルで広く「ECB」に対する不快感と不信感が高まりつつあり、見逃すことはできない問題になりつつあるのです。
懸案のヘリコプターマネーとは?
ヘリコプターマネーとは、消費喚起や物価押し上げを狙って「ECB」が市民に直接資金を配る構想のことで、まさに空中からカネをばら撒くことになぞらえてヘリコプターマネー構想という名称がつけられています。
もともと3月にこれにて打ち止めと余分なことを言ってしまった「ドラギ総裁」が同じ記者会見の席上ヘリコプターマネーはすぐに導入を検討しているわけではないものの、非常に興味深い手法であると発言したことに起因しています。
しかしこれにドイツが猛反発をしており、「ECB」の低金利政策の影響で不動産価格が上昇するなどの動きが出ていることから、ヘリコプターマネーなどを導入すれば超低金利政策を過剰に運用することになりかねないとの見方がアナリストの間で出ており、反対の声が高まっている状況にあります。
「ECB」がヘリコプターマネーを実施する場合、ドイツは法的措置を検討するとの報道もドイツメディアには出始めており、10日にはドイツの閣僚が「ECB」の低金利政策により年金が大きく目減りしているなどと批判し、対立が深まっているのが実情です。
プラート専務理事とコンスタンシオ副総裁は先週の段階でヘリコプターマネーについては検討もしていないと火消しに回っていますが、ドイツとの溝が埋まったとはいえない状況で、果たして22日の理事会でどのような議論がなされるのかに注目が集まっているのです。
マイナス金利をはじめとした量的金融緩和の限界か?
多くのトレーダーの方は既にご存知のとおり、「ECB」は昨年12月に緩和措置を行い大失敗、また今年に入っても3月に未曾有ともいえるて、んこ盛りを緩和を実行したにも関わらず「ドラギ総裁」の打ち止め発言ですべては水の泡になり、ユーロは「ECB理事会」の結果発表のたびに350PIPSから400PIPSという大規模なショートカバーに見舞われる最悪の事態になってきています。
これまで日本の日銀に比べれば市場の期待を利用してうまく立ち回ってきたかに見えた「ドラギ総裁」ですが、そのドラギマジックも既に効力を発揮できない状況に陥りつつあり、日銀も市場を制御できなくなってきていることから、「中央銀行」バブルの終焉が近いとの見方も広がりつつあります。
こうした「ECB」域内の参加国との対立が為替相場にどのような形で影響として現れてくることになるのかは、いまひとつよくわかりませんが、少なくともプラスに働くことはないと考えられ、ユーロの動きがどのようになっていくかが注目されるところです。
どうも「中央銀行」の政策が先進各国ともにギクシャクしはじめていることだけは間違いないようで、為替相場への取り組み方にも変化が求められる時期にさしかかっているのかも知れません。
6月には英国によりEU離脱の国民投票も控えており、為替相場の中心はまたしてもドルからユーロに引き戻される時期がやってきているようです。
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(この記事を書いた人:今市太郎)