まずは4月28日の日銀政策決定会合
これまでもこのコラムでご説明していますが、日銀が28日の「政策決定会合」で株価押上、ドル円下落防止のために何か手立てを出してくるのかが注目されます。
消費増税見送り感が高まる中で財務省の意向を強く反映している「
黒田日銀総裁」がこの時点で本当に緩和を行うのかがひとつの見所です。
ただし、28日までに株価と為替が一段安になった場合、見て見ぬフリをしているわけにいかないという見方があるのに加え、上海「
G20」でも確認された故意の為替安誘導を行わないという点では、このサミット前の微妙な時期に、そもそも日銀が「
金融緩和」に動くことは難しいという見方も登場しはじめています。
しかも、過去2回政策決定で大きくドル売り円買いを引き起こししてしまったという「
金融緩和」での市場制御不能状態も気になるところです。
なにもしなければ失望売り、なにかしても中途半端や材料出つくしをみればまた売られ、しかもその後ゴールデンウイークで海外勢の仕掛けにあいやすい時期ということで、このイベントは円高リスク満載の状況といえます。
5月26~27日・伊勢志摩サミット
安倍政権は5月後半の伊勢志摩サミットで先進国としては初の大型財政出動の実施を表明し、増税も先送り、もしくは時限的に消費税率5%戻しなどというサプライズを用意しようとしているようですが、その劇的効果を選挙でアピールするため、5月末までは株も為替も放置する可能性もではじめています。
確かに為替は「
口先介入」がかなり出始めていますが、実際に「
介入」できる可能性は極めて低く、しかも万が一できたとしても相場押し上げではなくレベル維持のワンポイント「
介入」に過ぎません。
ですから、1回やってしまえばもう次は簡単に行えないのが実情で、V字回復感を狙うなら確かに5月末までなにもしない可能性があるというのはうなずけるところです。
したがってこのイベントを前にしても対ドルを中心にした円高になる可能性は高まります。
6月23日英国EU離脱国民投票
円高リスクは国内の政治状況だけではありません。6月23日にはEU離脱の可否をかけた英国の国民投票が行われます。
事前の世論調査で離脱が増えてポンドが売られ、投票の結果で残留が決まればポンドが上下するだけで前回のスコットランドの住民投票時のように、動きに終始することになりそうですが、「パナマ文書」の問題で「キャメロン首相」の地位も危うくなってきていると言われます。
こうしたことも絡み合いながら離脱に対する賛成票が多数を占めた場合、主要通貨の中でもっとも逃げ場の大きい円に買いが集中し、この段階で対ドルでは100円に到達する可能性も出てきているのです。
こればかりはやってみないことには判らない部分がありますが、本邦の個人投資家が考える以上に対ドルでもその他通貨でも円高が急激に進行するリスクがあります。
参議院選挙後(7月10日以降か)
円高リスクの問題は参議院選挙がらみでもやってきます。1990年代からの過去8回の参議院選挙では選挙前に対策てんこ盛りで株価は上昇しますが、その後は名実ともに材料出つくしとなるため、株が下落しやすく、直近の状況ではドル円もそれについて下落する可能性は極めて高くなります。
またこの時期国内の企業決算もほぼ出揃うため円高シフトで業績が減収減益となる企業が多くなるのは間違いなく、株も為替も支援材料はなにもない時期にさしかかってしまいます。
7月18日共和党全国大会
今年誰もが想定していなかったリスクとして急激に浮上してきているのが、「ドナルド・トランプ氏」の大統領候補の決定問題です。
現状では同氏が共和党の大統領候補に選ばれる可能性はかなり高く、大統領選挙での結果はともあれ、7月18日の共和党全国大会で「
トランプ氏」が正式に候補になった段階でまずドル円はかなり売られて円高になることが容易に予想されます。
これは極めて市場のセンチメントを反映したものですからそれまでにドル円がどのあたりの価格に位置しているときに起こるかで下落のレベルは変わってきますが、90円台に突入する可能性はかなり高いのではないでしょうか。
極めつけは11月8日大統領選挙
さらに今年最大の円高リスクがやってくるとすれば11月8日の米国大統領選挙でその「トランプ氏」がまんまと大統領に選出されてしまうことです。
エキセントリックさが際立つ「
トランプ氏」が本当に大統領になった場合「
クリントン候補」よりはましという声も米国内には聞かれているようですが、その手腕の実態はともあれ、選出が決定すれば為替の世界に関してはドルが猛烈に売られることは間違いなく、1ドル80円台も夢ではないと思われます。
ということで、悪いことだけオンパレードで積み上げてみましたが、ここにあげたリスクの半分は海外の話に起因していますから、まったく逆さまの状況になることもあり、正直どうなるかよくわからないものです。
一方国内の政局に絡むほうの円高リスクはかなり現実味のあるもので、個別事象におけるドル円の動きには予想に反するものになる可能性もありますが参議院選挙後出尽くしで株も為替も下落する可能性はかなり高いといえます。
株も為替も本質的な景気回復となんら関係ない政府主導の政策期待で上げたり下げたりしているだけですから、市場の期待と食い違いはじめれば大きく下げるリスクに常に見舞われていることを意識してトレード
しなくてはなりません。