8日の東京タイムは前日NY市場でドル円が107円台中盤まで円高をつけたことから一定の戻しが入り、109円ぎりぎりのところまで戻す展開となりました。
しかも市場では参加者もまばらなようで、抜け殻相場の様相を呈する静かな動きとなってしまいました。上の方の価格帯では依然として戻り売りを試すトレーダーも多く存在するようですが、週末を控えていることもあり今週はこんなところで一旦小休止といった様子が窺えます。
ロンドンタイム以降は109円台でも動くようになっており、週末らしく一定のショートカバーが出始めているところです。
ドル円を大きく売り込んだ「投機筋」は107円台まで相場が下落したことで、どのぐらいの達成感があるのはいまひとつよくわかりませんが、為替相場への日本政府の「介入」が認められない限り、週明けに105円からそれ以下のレベルまで狙ってみる可能性は確かに捨てきれない状況です。
ただチャートを改めてご覧いただくとわかりますが、4月の1日から既に6円も継続して下落しているわけですから、さすがにスピード調整がでてもおかしくはない状況です。
G20を週末に控え来週は政府が手出しのできない一週間に
来週は14日、15日に「G20」財務相・中銀総裁会議が開催されます。
これまでの流れから考えて円高に同情的な国が登場し、緩やかなドル安を志向する米国が日本の円高阻止政策に理解を示すなどというプラスの事態になるとは到底思えません。
おそらく、「型通りの過度な通貨安競争を阻止する」と言った共同声明が出る程度で、具体的に円高を止めることにはならないものと思われます。
また、110円程度まで戻ったとしても「円高ドル安のトレンド」は変わりませんから、来週も丁寧に戻り売りに徹し、あまり突っ込みすぎるところまではポジションを引っ張らずにしっかり利食いを積み上げている堅実な方法に終始することがお勧めになりそうです。
ファンド勢も1日に2円以上下落するといったやり方は急激な為替の変化になることをよく理解していますので、ある程度下げたら多少ショートカバー仕手、また下げるといった流れが来週も続くものと見られます。
「GPIF」をはじめとする機関投資家は、まだ来週はじめは本格的に動き始めないはずであり、もう一週間程株も為替も下落局面に支援の手がでるのはかなり限られることが予想されます。
人工的につくられた相場は必ず崩壊する
この3年間「アベノミクス」という枕詞は、景気回復の旗印のようにメディアで使われてきました。
実際に株も上昇し為替も円安に進んだことは事実ですが、その実態は本質的な景気回復ではなく、「量的金融緩和」と株上げ、さらに自らの通貨の切り下げによって企業が業績に下駄を履かせてきたことに過ぎません。
ですから、一度この流れが逆回転して外国人の株買いが止まり、ここ数ヶ月のように継続的に売られる状況になってしまえば、株も為替も連動してそう簡単には上昇ステージには戻らない相場が続くことだけは間違いなさそうです。
特に為替は3年半近く上げてきたわけですから、向こう1年程度円高に振れてもおかしくはない状況です。したがって、大きな戻りを期待して逆張りで買いから入ることだけはまだ避けるべき時期です。
「中央銀行」主体で、ある意味人工的に作られた相場ですから、その中身が剥落し始めると下落は早くなります。
現実に「アベノミクス」3年半弱の動きの中で、相場はほぼ1年半前にあたる2014年10月末段階にまで巻き戻されてしまっています。事と次第によっては全て巻き戻ることさえありうると考えておくべきです。
ドル円110円は今後かなりのレジスタンスライン
これまで簡単には割らないと思われたドル円の「110円」は今回かなりあっけなく割れる事となってしまいました。
ただ、こうしたサポートラインはこの1~3月ではかなり何度も下落を止めたことから、完全にレジスタンスラインとして機能することになりますので、相当頑張って戻すことができても「110円」が上限で下方向は依然として「105円」の幅を想定しておく必要がありそうです。
今回とても唐突に株安と円高が示現したと驚かれている方も多いかとは思いますが、外国人の株売りはこのコラムでも何回か触れさせていただいていますし、「投機筋」の円ショートのポジションも2月11日あたりから確実に増えてきていますので、外国人投資家にとってはかなり準備万端で手に入れた状況といえます。それだけに一過性の形で収束するとは当面思えない動きが続きそうです。
少なくとも4月中と5月の連休のあたりは、さらなる下落に注意を払う必要があります。
(この記事を書いた人:今市太郎)