このコラムで書いている内容よりも相場のほうがはるかに先に動いてしまう為、なかなかリアルタイムの状況をお伝えしにくくなっています。
既にドル円はここでも指摘してきたように100円方向に大きく動き出しており、下方向にはさしたるサポートもないため、下落が止まるところまでついていく以外には手立てがない状況となってきています。
メディアなどでは一定の下落が示現すると達成感から「一息ついた」といった言葉が飛び交いますが、この下落を予見して長らく円ショートのポジションを抱えてきた投機筋にとっては1円~2円の下落で達成感が出たなどとは言い難く、どこまで下げれば気が済むのかが大きな注目点になりつつあります。
上海合意が本当ならば15%以上の調整も各国は容認か
この下落余地の話は日本を始めとする主要国の金融当局の容認レベルの問題にも絡むことになります。
米国への忠誠を誓うためなのか、「WSJ」の取材に介入はしないことをはっきり伝えてしまった「安倍総理」は身から出た調子のいい発言で、自らの座を危うくしかねないほどの円高に直面してしまっているのです。
3月の上海「G20」でドル安に対する秘密裏の合意があったとすれば、通常15%以上の調整やむなしというのがこれまでのこうした合意の実績であり、下手をすれば20%の調整もありうる話になります。
125円レベルからの調整ということで考えれば、15%の調整が106円前後であり、20%の調整となれば100円が視野に入ってくることになります。
月末までの空白期間を熟知したファンド勢
海外の「ヘッジファンド勢」はドル円が月足で20ヶ月移動平均を割り込んだあたりから円ショートを積み上げており、「為替介入」のリスクも無くなった今、満を持してドル売り円買いをしかけてきているのが現状です。
ロンドンタイムで下落してもNYタイムで異なる参加者ベースでさらに下落を追っては緩やかに戻し、一気に走らないようにしながら売りをしかけるというなかなか巧妙な下げを継続中です。
つい最近の113円レベルから考えれば6円近く下落しているわけですから、それなりの達成感はあってしかるべきですが、5月に決算を控えるファンド勢はここで取れるだけとっておきたいのが正直なところでしょうから、状況次第でもう一段下まで狙いに行くことが想定されます。
またファンド勢は、本邦の機関投資家が4月の第三週まで少なくとも投資資金に手をつけられない状態であることをよく知っています。
下値で「GPIF」やかんぽなどが買いを入れてこないことを十分承知で売り浴びせに来ていますので、個人投資家が考える下落の値ごろ感とはことなるイメージを持っている可能性があります。
気になる本邦個人投資家の買い向かい姿勢
こうした相場状況でいつも問題になるのは、なぜか国内の個人投資家が相場の動きについて行かずに、「逆張り」で、ある程度の下落レベルで買い向かおうとすることです。
下記の個人投資家動向は6日に「外為どっとコム」が開示しているものですが、108円レベルでは買いを入れていた個人投資家が多かったものの、結果的にはほとんどが下落に食われてしまっているのが実情です。
下値にはサポートラインがほとんどないものの、こうして相場が下がると下値を買おうとする国内の個人投資家の動きがある意味でドル円のさらなる下落を誘っているともいえます。
こうしたことから、今回の下げでもあまりショートカバーが大きくでないことが非常に気になるところです。やはり底がわからない、こうした相場状況では少なくとも順張りで相場についていく姿勢がないと、せっかくの利益チャンスを大きく逸することになってしまいます。
ドル円相場はここへ来て「明らかにトレンドが変化していることをしっかり理解すべき状況」です。
これまでの下値で買うという安易な習慣は損の元となる動きなのです。
(この記事を書いた人:今市太郎)