5日の東京市場は、また日経平均が1万6000円割れを示現し、ドル円もあっさり110円台を試す動きとなりました。
株式市場では「原油価格」の低下と円高がもっぱらその原因といわれているようですし、また「QE」が近づいていることも株価下落に拍車をかけているように思われますが、この株の下落はどうやら一時的なものであるとはいえないことが東証の投資主体別売買動向の推移で見えてきます。
外国人投資家は本格的な日本株売りに転換
東証では投資主体別の売買動向を継続して発表していますが、この動きを追っていきますと、明らかに外国人投資家の日本株売買に変化が現れていることが明確にわかります。
昨年8月中国人民元が突然切り下げられたあたりから、資源国のソブリンウエルスファンドが現物株を売り始めたのは記憶に新しいところですが、年初からも外国人投資家はコンスタントに日本株を売却しており、すでに3月末で5兆円を軽く突破する状況となっています。
また今年に入ってから顕著なのは売られている株の97%弱が現物株であり、「実需」に基づいた売りが継続しているということです。
つまりこの外国人の売りは「ヘッジファンド」などが短期的に先物で空売りをしていいるのとは訳が違う、結構根の深い動きであることが理解できます。
4月に入ってからの動きはもちろんこれからの動向を見ていくことになりますが、新年度以来下落を続ける日経平均、TOPIXを診るかぎり外国人投資家が積極的に買いを入れている状況にはなく、当面政権や日銀からの具体的な支援がない以上、下げ相場が続く可能性も覚悟しておかなくてはならない状況になりつつあります。
メディアでは「アベノミクス」の魅力が剥落したのではないかとの指摘もでてきていますが、「アベノミクス」自体への評価は別として、日本株に対する投資妙味が海外の年金などの長期投資を行うファンドから大きく下がり始めていることだけはどうやら間違いないようです。
日経平均との連動性の高いドル円は、この4月株とともに大きく下げる動きに注意が必要となってきています。
110円を下回るとサポートラインが極めて乏しいドル円
多くの市場関係者からはドル円は引き続きレンジ相場であるという指摘がでていますが、日本株が正式に売りのターゲットとされてはじめている以上、これまでのようにそこそこのサポートラインで下落が止まるとは言い切れず、安易な逆張りは恨めに出る危険があります。
年度末1万7000円台まで回復した日経平均を考えれば、1万4000円にまで下落するなどありえないと思われる方も多いと思います。
しかし、2月12日には1万4850円レベルをつけていますから、2月11日のドル円の下落水準である110.69円を考えれば、日経平均がもっと下げてもまったくおかしくない状況であるいえます。
参議院選挙年のアノマリーは夏に株価大幅下落
夏の参議院選挙に向けて安倍政権は大型の財政出動に加え、消費税増税の先送りを検討しているようですが、発表はいずれも5月にずれ込みそうな様相です。
またこの間に株価が大きく下げれば日銀もいよいよ量的追加緩和に踏み切る可能性がでてきますが、こちらのほうは本当に株と為替が素直に反応することになるのかどうかはかなり怪しい状況で、こうした3つの政策がてんこ盛りで発表されると、材料出尽くしからまたしても売られるという全く裏目の動きも考えられます。
92年からの参議院選挙年のほとんどは選挙の前に大幅に株価が下落する動きとなっており、今年もその「アノマリー」がワークするとすれば、7月の前に株価が沈み込むリスクも考えておく必要がでてきています。
5月から6月にむけてドル円が「100円方向」という話がここでも浮かび上がってくるわけです。110円台に突入したドル円は6日の午前0時59分にすでに109円台に突入しており、今週さらに下落幅を広げる可能性がでてきています。
このままでは誰の助けも来ないうちにドル円が大きく下落することもありえそうな展開となってきています。金曜日の東証のSQに向けて株の一段の仕掛け売りがでた場合今週にもドル円が一段の円高に動くことに注意が必要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)