一旦は減産合意への期待が高まり下落が収まったかに見えた「原油価格」ですが、23日のニューヨーク株式市場では、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が、「原油価格」を維持するため生産量の据え置きはしても減産はしないと発言しました。
これにより、原油の先物価格が値下がりしたことを受け、エネルギー関連の銘柄などに売り注文が広がり、NYダウも190ドル以上の値下がりを見せることとなりました。
相変わらず原油に相場が振らされる展開が継続しています。原油の日足チャートを見ますとダブルボトムをつけたようにもみえますが、サウジアラビアが減産に応じない限りは価格が安定する可能性は低く、当分下落を意識した相場展開が続きそうです。
米国のエネルギー系ジャンク債利率20%超でいよいよデフォルト間近
そんな中で米国のエネルギー系の「ジャンク債」の利率が20%を超えるところまで跳ね上がっており、「デフォルト」に向けて突き進んでいる状況が明らかになっています。
米国内の「シェールガス」開発会社は中小の企業が多く、そのほとんどがこうした「ハイイールド債」、つまり「ジャンク債」を利用して資金調達をしていることからこの領域で「デフォルト」が起きればかなりの業者が破綻することは間違いなく、これが株式相場や為替相場にどの程度の影響がでるかが危惧されるところです。
当然こうした破綻が鮮明になれば産油国の中でも既にぎりぎりの状態にあるベネズエラやロシアなどに影響が及ぶことが考えられ、そのネガティブな波及効果についてはあまり甘く見ないほうがよさそうな雰囲気になってきています。
サウジの狙いはまさにシェールと他の産油国の破綻
サウジアラビアは先ごろ、国営企業アラムコの海外部門の「IPO」を決定しており、これが実現すればほぼ日本円にして50兆円程度の資金調達ができることから、向こう2年程度「原油価格」が20ドルを割り込む最悪の事態に至ってもなんとかやっていける目処が立っているといいます。
この間の「OPEC」産油国の動きを見ていても減産について一定の調整が図られるような状況にはなく、業界としてグレンコアのような大手が破綻したり、「シェールガス」関連企業が連鎖的に市場からいなくなるなどの大きな業界再編が起こらない限りは原油も底値をつけないという味方が広がっております。いよいよ・・こうした危機的な局面を迎えようとしている可能性が高まっています。
他のジャンク債に広がる動きにも注意が必要
米国のハイイールド社債(BB格クラス以下の低格付け社債)全体の利回りは、2月中旬には対米国債で8%を超える水準に達し、「リーマン・ショック」後の最も高い水準になっています。
先般の「ドイツ銀行」のCoCo債に絡む不安を含めて、こうした「ジャンク債」の「デフォルト」が広範に拡大すれば「リーマン・ショック」の再来の可能性もでてくる状況で、予断を許さないとこに差し掛かっているといえます。
問題はこれが果たしてどのタイミングに訪れるかですが、既にエネルギー系の「ジャンク債」については、もはやいつ「デフォルト」になってもおかしくない状況であり、「WTI」の原油先物価格が20ドル台前半に突っ込んだところで一斉に破綻が始まる可能性も高まっています。
実は米国のこうした「ジャンク債」はハイイールドボンドという名称になっていて日本で証券会社が販売している高利回りの投資信託にもかなり組み込まれており、「デフォルト」になってみて初めて自分も買っていたというサラリーマンが多数登場するのではないかとも危惧されています。
この手の話は金融系メディアでも詳細が語られないため、単に「原油価格」の推移だけが報じられていますが、正直なところ、かなり危ないレベルに差し掛かっている状況で、株も為替も突然の大幅下落に十分な注意が必要です。
とくにこのエネルギー系の「ジャンク債」は米国における債券ですからひとたび事が起きればかなり大事になることだけは間違いない状態にあります。
(この記事を書いた人:今市太郎)