2月26日から上海で開催される「G20」は中国が初の議長国となる会議であり、中国経済の問題はもとより」「SDR」入りした人民元がどのような形で国際化されるのかといった問題も大きくなっています。
一方、日経平均やドル円を扱う投資家筋からは「G20」 でなんらかの国際的な嘲笑行動の発表があるのではないかといった期待も寄せられている状況ですが、果たしてそうした動きになるのかどうか、かなり大きな疑問となっているのが現状です。
また何も起きずに失望売りがでた後に、中国では3月5日から全人代が開催される予定で、「G20」後に、あえてここにあわせた「人民元の切り下げ」などが登場しますと相場は昨年「8月24日の暴落」のようなリスクに見舞われることになります。
各国が通貨安戦争を繰り広げているだけに、中国が「変動相場制」の導入を持ち出す形でこうした人為的切り下げに動いた場合、だれにも止められないのが実情で、結構恐ろしいタイミングにさしかかってきているわけです。
世界的な通貨安競争の中でドル円の円高は問題にならない
日本経済から見た場合、株価は年初から大きく下落しドル円は想定以上の円高が進んで入ることは確かですが、いまや世界的な通貨安競争の真っ只中であり、しかも米国はドル高を危惧しはじめていますから、「購買力平価」からみてもドル円が一方的に円高になっているとは言えません。
為替の領域で、日本の円高牽制が国際的に支持されることは考え難く、さらに日本に都合のいい協調行動が実現する可能性などはほとんどないのではないかと思われます。まして、それを超える強調介入といったことの可能性は限りなく0%に近いのが実情です。
海外の投機筋がなにを過剰期待しているのかはわかりませんが、あっさりその期待は裏切られることになりそうです。
また株価下落という視点でも先進各国の「中央銀行」は追加の緩和措置をとって、今の状態に甘んじているわけですから、果たして協調行動といったときに声明を超えた具体的な行動に関してのコンセンサスがとれるかどうかもかなり怪しい状況となってきています。
新興国における資本規制、つまり外貨持ち出しや外国債券への投資を規制する資本規制を導入し通貨取引を制御する動きが議論されるという話もありますが、こうした話が具体化した場合さらに新興国への投資がされ難くなることは間違いなく、本当に「G20」で決定すべき事項なのかどうかという大きな疑義も残ります。
中国は3月5日の全人代までは相場を持たせる動きに
今回の議長国を勤める中国はあれやこれや槍玉に挙げられることを想定してか、海外メディアの取材陣の数も限定するなど姑息な動きに出ているようですが、3月5日に開催される全人代まではなんとしても株も為替も維持させることが想定である為「G20」の前に大きな変動はでないものと思われます。
また、年初の株式市場の「どたばた劇」の責任をとって中国の証券当局トップ、肖鋼・証券監督管理委員会主席が20日、事実上更迭されたため、上海市場はこれを好感して相場が上昇する可能性もでてきています。
今回の更迭は株式市場の混乱の責任を問われた形ですが、責任者が更迭されたところで、状況は一つとして良くなっているわけではなく、むしろ無難にこなした「G20」の後に全人代の開催タイミングで、「PBOC・中国人民銀行」がいきなり引き金を引くのではないかと危惧され始めているのです。
全人代絡みでまさかの10-15%人民元切り下げも
中国政府は日本による「人為的な円の切り下げ」に相当頭にきているとも言われており、今回「G20」をこなした後で、いきなり「人民元の切り下げ」を実行するのではないかとの厳しい見方も高まっています。
10%を超える下げをいきなり出してくるのかどうかはわかりませんが、もはや資本流出は止められない状態であり、ここで3%ずつ小出しにするのかいきなり10%の切り下げを持ち出してくるのかどうかは、まさに「習近平」のセンスの問題に絡む内容になりそうです。
ちなみに3月は10日が「ECB理事会」15日が「日銀政策決定会合」そして16日が「FOMC」となりますので、中国が全人代に絡めて本当に「人民元の切り下げ」を持ち出してくればその後の週の相場はかなり荒れることになるのはほぼ間違いなくなるのではないでしょうか。
3月についても初旬から、緊張感を強いられる相場展開が続きそうな嫌なスケジュールが続きます。
(この記事を書いた人:今市太郎)