日銀が「マイナス金利」の政策決定会合を行って以来、どうも為替相場の状況が読み取れない時間が長く続いています。すべてが日銀の決定の影響ではないものの、相場がなにかに怯えはじめて必要以上に下落を加速させていることがチャートから見えてきます。
これといった理由がないままに短時間での猛烈な下落を繰り返すドル円
どうも2月9日のドル円相場の場合、それまで続いたドル安から、円高が主体となって大きく値を下げています。理由としては欧州系の金融機関の信用不安などが後ずけでその理由とされていますが、2月8日における東京タイムの午後から加速しはじめたドル円の下落は同日のLondon Fixあたりの時間帯でほぼ2円30銭程度の大幅下落を見ています。
そして明けた9日朝「115,852円」の高値からはじまったドル円はあれよあれよという間に「114.206円」をつけてしまい、こちらも1円60銭以上の下落を示現させてしまいました。
今回はそれなりのショートカバーもでていますので、下げ一方という感じではありませんが、これまで日常的に日足ベースでせいぜい1円程度しか動かなかったドル円相場が、毎日それをこえる「ボラティリティ」で展開してしまっているために、本来はつかなくてよかったはずのストップロスにまで相場が到達することで投げが投げをよぶパニック相場に陥っていることがよくわかります。
とくに115円台というのは昨年のドル円相場の底であり、これを下回ると2014年、2013年にまでさかのぼらなくては下げのポイントが見つからない状態で、次々ストップロスを巻き込む動きをみてさらに投げが入ることから相場の下落は突然加速する動きとなってしまったわけです。
一過性の円高ではなく実需ベースでの各種状況がずしりとのしかかるドル円
確かにリスクオフ相場が継続していることはわかりますが、先進国の「中央銀行」の政策決定会合もなく、中国も春節でとりあえず足元の相場下落要因が小休止の中で、「原油価格」の多少の下落と欧州系銀行の信用不安の問題だけでここまでドル円を中心に円高が進むことを単なるリスクオフセンチメントとだからと説明されてもいまひとつ納得がいかない状況です。
やはり国際収支が2015年の「経常収支」で16.6兆円の黒字となり、前年に比べ黒字額が14兆円も増加していることが為替相場に与える影響を大きく変えていることが伺われます。
とくに貿易収支の改善は、顕著で昨年の「貿易赤字」は0.6兆円と、一昨年までの大幅マイナスから実に10兆円近く改善していることが、少なからず為替相場に影響を与え始めていることがわかります。
2013年「アベノミクス」初年度に「ヘッジファンド」を中心とする投機筋が国内の株式に投資した金額は15兆円といわれますが、そのほとんどを為替でもヘッジしていたことから、ドル円は株価と連動して大幅に上昇することとなりました。
これをさらに支えていたのが「貿易収支」の年間13兆円ほどの赤字であり、国内経済の「ファンダメンタルズ」としてドル円を定常的に買い支えてきた存在が明確にあったわけですが、この2015年はその両方ともが市場から消えており、安定的にドル円を買う主体がないまま相場が下落し始めるとパニック的な売りになってしまうことが容易に想像できます。
フローが減少し、かつ投機的な買いによる円安も消えてしまえば買い手不在の中で相場が下がるのは当たり前の話で、このあたりが一切語れないままに刹那的なセンチメントとして円高を認識すると、どうもとんでもない間違いを冒してしまいそうな相場展開になりつつあります。
中央銀行バブル崩壊の前兆か?
ここ数年、「中央銀行」が中心となって株や為替を押し上げる、いわゆる「中央銀行」バブルの相場に市場が慣れきってしまい、緩和がでなければ催促をするような相場状況も見受けられるようになってきていますが、その一方で緩和措置がでても昨年の12月の「ECB」の緩和あたりから相場がしっかりその状況に反応しなくなっている状況が顕著になり始めています。
3月にもまた「中央銀行」の政策決定が次々登場しそうですが、これまでの結果を踏まえた動きと同じものになると信じすぎるのはかなりリスクが高くなってきているといえそうで、「中央銀行」頼みの相場が終焉しかかっている気配も感じられます。
テクニカル的には底値の逆張りによる買い向かいはかなり危険ですが、ドル円は丁寧に高値を戻り売りするとこの乱高下状態でもそれなりにとれる相場が続いています。
とくに足元では115円にプレーンオプションが大量にあることからなぜか115円をはさんで妙な戻りがでています。今やこうした動きもうまく利用させてもらうしかない相場状況です。