その結果ユーロは対ドルで売られ、2週間ぶりに1.08ドルの水準を割り込むこととなりました。
しかし、1.07台の滞留時間はかなり短く、相場はNYタイム後半にすでに1.09に近づくレベルまで戻すこととなり、大きな影響はでずに終盤を迎えています。
こうした下げを持続できない相場状況は、今後のユーロの「金融緩和」でもユーロドルが大きく下げないことを先取りで示唆しているようにも見えます。
市場は、「ECB」が中銀預金金利を現在のマイナス0.3%からさらに10ベーシスポイント(bp)引き下げると想定しているようですが、今回の「ドラギ総裁」の発言で当初6月と想定されていた追加緩和が3月に前倒しになることが鮮明となりました。
このマイナス金利だけでどれだけの効果を発揮することになるのかが注目されるところで、完全にユーロキャリー取引が市場で定着していることから、有事の際にはユーロが買われるという実に皮肉な状況が定着化しているのが現状です。
中央銀行の金融緩和には限界が迫っている
これまで「ECB」の追加緩和にはそれなりの効果が発揮されてきましたが、12月3日の緩和の発表後も大きな効果を上げることができておらず、しかもその賞味期限はどんどん短くなる傾向が顕著にあわられてきています。
とりわけマイナス金利はユーロ圏では金融機関の資金の貸し出しにリアルにつながっているため、日銀の国債買取で金融機関から当座預金にお金が戻る「豚積み」状態よりは効果が認められるようになってきています。
債券の買い入れはこれ以上できないのが実情であり、初回に比べるとその効果はどんどん限定的になりつつあります。
ドルインデックスはすでに高値終了の可能性
ドルインデックスは昨年12月2日の高値10051をもってドル高が終了した可能性を示唆しています。
この見方が正しければ2016年には一段とドル安が進む可能性があり、ECBが施策を投じてもユーロは昨年3月の安値1.0458をもってここ15年のサイクルのボトムに到達している可能性が高くなっています。
長期サポートラインは1.044ドルであり、再度下落を試しにいってもここから大きく離れることはなさそうな状況になってきているのです。
昨年パリティへの到達が話題になりましたが、2016年についてはとてもそこまで到達する世界ではなさそうな様相となってきています。
ただしユーロ円はさらに大幅下落の可能性も
円高で軒並み下落が続くクロス円の中で「ユーロ円」だけは大幅下落を免れていますが、今後ドル円が大きく下落し、一時的にせよユーロが緩和措置で上値を抑えられることになると掛け算通貨であるユーロ円は更に下落する可能性が高くなってきています。
したがってユーロドルとユーロ円は分けて考える必要があり、クロス円としてのユーロ円の動きには十分な注意が必要になってきています。
最大のポイントとしては126円を割れるかどうかであり、今やぎりぎりの世界になってきていますが、これが守れれば反転、逆に下抜ければ121円から115円方向までの下落が視野に入ってくることとなります。
全体としてドルの下落傾向が鮮明になりつつある中で、ユーロは対ドルでは上昇することが考えられ、思わぬ上値をつけに行くことも想定しておく必要がありそうです。
ターゲットは2014年からのユーロ安に対する38.2%ないし61.8%戻しで、具体的には1.1808から1.2643までの戻りもありうることを意識しておくべきです。
ユーロドルが1.26を示現した場合、ドル円は一体どのレベルになるのか考えると恐ろしくなりますが、本来金利差から言えばユーロが強含む可能性がないはずの為替市場はあきらかにそれとは違うファクターで動いていることを認識しなくてはなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)