そもそもMT4とは
MT4はロシアのソフトウエア開発会社である「メタクゥオーツ社」が開発したシェアウエアであり、多くの店頭FX業者に無償で配布されていることから、開発コストがかからないというメリットを享受して、世界中で利用が進んでいる取引ツールです。
特にチャートソフトと呼ばれるだけのことはあり、あらゆるチャートを利用することができますし、不足分は後からでも外部のソースを使って追加が可能なのも魅力となります。
また、このツールの最大の特徴は「
EA」・エキスパートアドバイザーを利用することで、自動売買を簡単に始めることができる点です。
国内ではこちらのほうがより大きく注目されることとなりましたが、実際に使ってみますと実にさまざまな問題があることも事実で、手放しでは喜べない状況も顕在化してきているといえます。
2012年からブームも既に国内では2社がまさかの利用終了
MT4が国内でも注目されはじめたのは2011年の後半あたりからで、国内業者でもいち早くこのプラットフォームの導入に踏み切った会社が登場して話題となりました。
そのうちの2社が「マネックス証券」と「サイバーエージェントFX」でした。
しかしマネックス証券は2014年の10月には利用を中止してしまい、サイバーエージェントFXはYJFX!に売却された後もMT4を提供していましたが、2105年3月にはサービスを終了するに至っています。
なぜ先行導入した業者がこうも簡単にサービスを終了してしまったのか?その背後には「
金融庁」の存在が見え隠れしているのです。
金融庁見解では有償のEA販売は投資助言業資格の取得が必須
海外では人のトレードを真似る「コピートレード」というのはかなり人気の高いもので、プログラムソフトのみならず「リアルなトレーダー」の売買をコピーして、そのままトレードする方法が登場しています。
しかし、国内ではこうした戦略と呼ばれるような売買プログラムは
「投資助言業の業務にあたる」としているのが「
金融庁」の見解であり、この資格を持たずに販売されている
EAはすべて違法商品として扱われているのです。
したがってMT4を利用して自動売買をプロモーションしようとする国内の店頭FX業者は、無償ですべての「
EA」を提供するなりしない限り、簡単にMT4を使った自動売買を告知ができない状況が続いているのです。
つまり違法商品販売幇助のような立場に陥ってしまうからで、これを理解したマネックス証券もYJFX!も利用を断念することになったというのが正直なところでしょう。
YJFX!からの新サービスがMT4の問題をずばり示現
「カードクリエイター」と呼ばれる取引情報を公開するユーザーの手法を、一旦YJFXが取り込む形で、YJFXとしてユーザーにその売買手法を提供するという苦肉のプロセスを採用するサービスが生まれています。
つまり、あくまでの利用者間のコピートレードではなく、すべてはYJFXが提供するトレード手法にしているのです。
これはまさにMT4で指摘されているEAの問題をクリアするために、プロセス変更を行ったビジネスモデルであり、業者が預かり知らない自動売買の戦略の流通が、いかに難しいものであるかを示唆したサービスとなっているのです。
金融庁方針に基づけばほとんどの情報商材は違法商品
この「金融庁」の厳格な方針に基づけば、情報商材や高額な価格で売買しているMT4用の「EA」や売買シグナルを発するソフトの類は「投資助言業資格」をもっていないかぎり、すべて違法商品ということになります。
これらの商品はなぜか、販売者がみな海外の南の島をうろついていて、朝一回だけ売買を設定すると巨額の利益を得られているという説明は実に笑わせてくれますが、国内では少なくとも売買手法を開示して有償で販売するというのは、MT4で利用できるものかどうかに係わらず個人、法人ともに無資格では行えないものであることはしっかり理解しておく必要があります。
MT4がかかえるもうひとつの問題~クライアントサーバーの稼動条件
MT4がシステム的に抱えるもうひとつの問題は、このツールでの自動売買が個別の「クライアントサーバー」に依存しているという点です。
もう少しわかりやすく言えばMT4をインストールしたPCなりタブレットなりで「
EA」を稼動させるため、この端末がネットと常時接続できませんと自動売買が確実に行われないという大きな問題があるのです。
たとえば自動売買を稼動させていくつかのポジションを「
EA」が売買しても、その後PCの電源を誤って、落としてしまったり、ネットと接続できなくなってしまったりすると、あらゆる場売買のポジションの制御不能になり強制「
ロスカット」まで含み損を拡大することすらあるのです。
こうしたリスクをなくすためにMT4での自動売買においては「VPS」と呼ばれる仮想化されたサーバーを外部のデータセンターなどに確保して、そこにOSを導入し、MT4 をインストールして常時稼動させること
を業者が利用条件としているのです。
しかし、これは月間で3000円から5000円程度の余分な費用がかかる上、サーバーの管理も個人の自己責任となるため、自動売買を行うためには相当な負担を強いられることになるのです。
為替の知見よりITの知見を問われるMT4の自動売買
こうした「VPS」の利用に関するトラブルで、MT4用に提供されているいくつかの業者の専用VPSは事前にOS,つまりWindowsはインストールされているので、MT4のみユーザーがインストールして設定すれば利用が開始できます。
しかし、通常のスクラッチからのVPSの場合、OS自体も自分でインストールする必要があり、しかもその設定を誤ってしまいますと、夜中にOSが自動でアップデートして、再起動するなどという想定外のことが起こってしまうこともあり、朝起きて気がついたらMT4が稼動していなかったなどというお粗末なことすら起きてしまうのです。
為替の知見だけでも大変なのに、ITの高い知見まで求められては利用者が増えないのも・・うなずける状況です。
さらに、これはあまり公表されていないことですが、MT4での売買を主力とするFXサービスでは、通常のノンストップサーバーの管理以上にサーバーを安定化させるための技術者を必要としているようで、海外でMT4主力で売買を可能としている業者には、こうしたテクニカルスタッフを想像以上に雇用しているのも特徴となっているのです。
つまり、IT知見が求められるのはユーザーばかりではないところも、国内少人数の店頭FX業者体制との親和性を欠くものといえそうです。
戦略ソフト・EAに対する過剰な期待もMT4の評判を落とす結果に
このMT4に注目が集まったのは、奇しくも「ヘッジファンド」などが多用していた高速売買やアルゴリズムによる売買が大きな利益をあげていた時期にも重なります。
多くの個人投資家が裁量取引に関する限界を感じた時期でもありましたので、あたかもMT4などの自動売買ソフトがアルゴリズムを多用して、市場状況に常にマッチする売買を提供するものと錯覚していたようです。
しかし、実際の「
EA」というもののソースを分析してみますと、ほとんどが特定のテクニカルツールによる売買シグナルを利用して動いており、シグナルが稼動するまでに時間がかかりますし、突発的な事象についてはまったく気づかずに、売買を継続させるために想像以上の
「ドローダウン」を引き起こすこともあるのです。
このあたりの、自動売買に対する過度な期待も結果として個人投資家の失望を生むことになっているようです。
こうしたことから自動売買は、もっぱらMT4 より業者のサーバーにバンドルされているミラートレーダーベースのものや国産の自動売買システムを使ったものに人気が集まるようになってしまっています。
さらに言えば、人が作った売買ソフトでは「バックテスト」をしてもいまひとつその動きが明確ではなく、「ループイフダン」のような仕組み売買の方が安心というトレーダーが増えていることも、また自動売買人気に影をさす結果となっているようです。
このように、トレーダーのインサイトにも変化が見られていることがわかります。