年初ですので、いろいろな専門家さんたちが今年のドル円相場の予想を出しています。
通貨レートの基本を忘れてはいけない
通貨レートの基準値の算出の仕方は去年、散々、何度もこのコラムで書き記したと思います。
復習をしますと、ドル円の場合は、アメリカGDP総額÷日本GDP総額=ドル円通貨レートで、この場合の表示は円になるのでアメリカのGDP総額は、ドル表示ではなく円換算で計算をしなくてはいけません。
小学校でも習うように割り算をする場合には、単位を揃えるという基本をお忘れなくお願いしたいと思います。この通貨レートの基準値の基本になるものは各国のGDP総額になりますので、このGDP総額の変動が、ドル円相場の変動に直結することを忘れてはいけません。
なぜなら、個人消費というのは雇用を前提として消費されるものですから、賃金が失業してなかったり、賃金が上昇をしなければ「GDP」の総額は上伸しないからです。この個人の収入というのは世界のどの国でも「GDP」の大きな割合を示してしますので、軽視はできません。
日本の場合は個人消費が「GDP」の6割を占め、アメリカでは4割を占めます。昨年までは通貨レートの基準値算出を主眼に置いていましたが、今年は各種「経済指標」が経済にどういう影響を与えるのかも考えていきたいと思います。
今年のGDP総額の予想
この数字はいろいろな世界機関が発表しています。ただし、この数字は年率○パーセント成長というような数字で表現をします。
なぜかといえば、日本の「GDP」総額は約500兆円になりますが、それをいちいち覚えるのは大変なことになりますので、日本は1.7パーセント成長、という風に総額ではなく年に何パーセントの「GDP」を増やせるかという風に表現するのがこの世界が当たり前です。
私のテクニカル分析の講義を聞いたことがある方は覚えていると思いますが、テクニカル分析の本当の基本は「ファンダメンタルズ」分析と一緒で、パーセント表示というのはみなさんが理解しやすいから表記しているだけであって必ず、正確な分析をするときは絶対値や総量で分析しなければいけない、ということを口酸っぱくいっていると思います。
つまり、予想をするときには金額ベースや総量ベース、絶対値での分析をしなければダメということです。しかし、世界の機関、「IMF」等を筆頭とする機関はパーセント表示になります。これはみなさんが理解をしやすいように配慮をしたものと理解すべきです。
いくつもの国連の機関やシンクタンクが毎年この数字を発表していますが、私たちがみるべき数字は「IMF」が発表したものと、各国政府が発表した成長率です。
日本は去年の場合は政府、内閣府が1.7パーセントと発表しています。アメリカは「IMF」の予想によると2.8パーセントとなっています。
ここでの算出方法
これは、簡単な計算でいくと「2.8÷1.7」になります。その結果は整数がなく小数点以下の数字になることはおわかりでしょう。
つまりドル円の変動率というのはこの成長予測では1パーセント以下しか動きませんと言っているようなものなのです。ですから、「今年のドル円は大して動きませんよ。」というのが私からみると、外為専門の優秀な「アナリスト」ということになるのです。
見逃している点
しかし、この予測は重大な点を見逃していることがあります。実は日本円は基準値から10パーセント以上割安な状態が続いているのです。
つまりドル円レートは適正値から現在8パーセントほど割安な状態ですので、8パーセント以上円高に行く可能性はあります。つまり112円くらいです。
しかも相場というのは公平にできていますので、たいていの場合10パーセント割安まで売られると、10パーセント割高な水準もありえるということになります。
つまり、「マックスで「円高」になると101円程度まであり得る」ということになります。
逆に円安の可能性を探っていきましょう。みなが円安にまだ行くと騒いでいますが、実際、120円近辺からは全然円安にいきません。
アメリカが利上げしたら、と皆がいいますが、皆さんはご存じの通り、アメリカの利上げというのは景気を冷やすのでアメリカの成長が止まることを意味します。
ですから、今年前半はそれほどドル高にはならないでしょう。一方日本サイドの「GDP」で考えていくと、新興国リスクがあります。
その新興国リスクがあるということで「日本銀行」はそのリスク対応に即して「日本銀行」の追加緩和を用意していると念頭のインタビューで「黒田総裁」は答えていました。しかし、「バズーカ」ほどではない、とも明言をしています。
この意味というのは、結局、新興国リスクが差し迫った場合、緩和はするがそれは円安の流れを加速するためのものではなく、円高や日本経済の沈没を抑えるための処置、もっと簡単にいえば現状維持装置なようなもので、これ以上円安に行かせるようなものではない、ということですよね。
結論
年頭や年初に円安予想をぶち上げた「アナリスト」は私からみるとアホであって、何の可能性があって円安にいくのか、と予想するかの意味がわかりません。
円安に行ったとしても去年のドル円の安値、127円から1パーセント未満円安に行った水準の128円がせいぜいでしょう。
この円安がさらに進むためにはアメリカの成長が予想以上か日本の経済が予想以上に落ち込むかの選択肢がないにも関わらず。逆に今年は、円高の可能性は十分にあるというのが個人的にはまともな考え方になると思います。
(この記事を書いた人:角野 實)