6日の雇用統計を受けて123円台まで上げたドル円は9日も123.60円近くまで上昇し上値をさらに試す勢いが見られましたが、結局いつもの火曜日になって嘘のように上昇意欲が失せてきてしまい、上にも上がらないものの下にも下がらない不思議な膠着状態を続けています。
このまま上方向を試せないと、6日の午後10時から12時までの間に無理やり開いてしまった窓を埋めにいく可能性もあり、ドル円は一本調子で上げる雰囲気にはなっていません。
強い勢いがでたユーロドルとは裏腹にしっかりしたトレンドにならないドル円
エンベロープの13日移動平均の日足で見てみますと、プラス2.0%までは到達寸前となっていますが、標準偏差でみると大きなトレンドを形成するまでの勢いがなく、毎度おなじみの雇用統計翌週の微妙な戻りを試しそうな気配が漂ってきています。
9日の月曜日に上方向を試そうとしていた「いきりたつ相場感」がまったく感じられない状況であり、ちょっと肩透かしを食らった状態が続いています。
押し目買いに押し目なしの可能性もありますのであまり悠長にはしていられませんが、とにかく年末に向けて一旦下値をつけたところを丁寧に拾うことしか今のところ手がない状況で、雇用統計の窓をうめに行くとなれば121.900円レベルまでの下押しを想定しておく必要がありそうです。
米英の分断を図った習近平への一撃をくらわす12月の米国利上げ陰謀説も登場
ところで、英国を訪れた中国の習近平国家主席は、まんまと英国に取り入ることに成功したようで、今回為替に関しては、ロンドン市場を軸に「人民元」の国際化を進める道筋を付けることになったのはどうやら間違いない状況となっています。
米国は中国との首脳会談後距離を置かざるを得ず、その間に「人民元」の国際化は英国主導で進められる可能性が高くなってきたと「投機筋」は見始めているようです。
10月27日、米海軍の駆逐艦が、中国が埋め立てを行う南シナ海の南沙諸島付近を航行し、中国軍がこれを追尾するという出来事がおきたのも、オバマ大統領が米中首脳会談直後に指示したことから起こったことのようです。
中国経済はかなり厳しい状況が続いているようで、しかも外貨準備の取り崩しも想像以上に進んでいるということで、このタイミングに米国が利上げを行えば少なからず中国に打撃を与えることになるため、あえて米国は中国に影響が大きくなるこの時期に利上げを断行するのではないかという米国陰謀説が市場に出回りはじめているようです。
もちろんこうした動きを進めれば少なからず米国経済にも影響がでることは間違いありませんから、どこまで信憑性のある話かはまったくわかりませんが、米中関係がそこまでこじれていると見れば、まったくありえない話ではないとも言えるのです。
「イエレン議長」が民主党員であることを考えるとオバマ支持もまんざら嘘ではなさそうな気分にもなりますが、この陰謀説の真偽のほどは別にしても米国が利上げをすれば多くの新興国に影響が再度ではじめることは十分にありえるわけで、中でも中国に影響を与えることは間違いなく、12月16日の直前から市場の流れが一気に変わることも想定しておいたほうがよさそうです。
クリスマス休暇に突入
現実問題として18日を過ぎれば米国系の「投機筋」もほとんどがクリスマス休暇に入ることになりますからサンクスギビングから12月の雇用統計を経て16日までが短期勝負のドル買い上げ時期になる可能性は高まってきているといえそうです。
現状のドル円がどこまで調整し、ショートのたまり過ぎているユーロドルがまたどこまでショートカバーするかが注目されますが、少なくとも12月第二週のはじめまではドル上昇の流れに乗ってみる手はありそうです。逆にクリスマス休暇以降、日本が正月休みに入るあたりから相場のセンチメントが急変することにも注意が必要となってきています。
それぞれに思惑の異なる市場参加者が参入して大きく動きそうなのが残り1ヶ月強の年末相場ですが、上げるにしても下げるにしても一定以上の動きがでることは間違いないようで、どうやってその動きに振り落とされないようについていくかが個人投資家にとっては大きな課題となりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)