サウジアラビアはインフラプロジェクトの支払いまさかの6ヶ月以上遅延
直近の報道で驚かされたサウジアラビアの「財政事情悪化」の報道です。
しかも足元ではそうした遅延は、今年になってからさらに増加するようになっており、政府は一旦締結した契約価格から再度値引きをもとめて業者と交渉を図るケースも頻発しており、かなりその財政事情は逼迫していることが窺われる状況となっています。
サウジアラビア政府は職員に倹約を呼びかけているそうで、一昔前とは隔世の感のある状況がやってきていることがわかります。
産油国の財政を逼迫させる原油価格の推移
原油価格の推移をおさらいしてみますと、今年「8月24日の株・為替相場大暴落」の際に「WTI」の原油先物価格も1バレルあたり「37.7ドル」という最安値を記録することとなりました。
米国が利上げを行わなかったことと雇用統計の結果があまりにも悪かったことなどから、一時的にリスクオフモードの巻き戻しが起こり、10月初旬に「50.9ドル」まで戻る局面がありました。
しかし今年5月の「62.5ドル」までの戻りには遠く及ばず、今後も「40ドル台」逆戻りの可能性を常に秘めながら相場は動きつつある状態です。
結局「ECB」の追加緩和も「原油価格」の下落で「デフレ傾向」に拍車がかかろうとしていることが大きな理由となっていますし、半年先送りした「日銀」の物価目標クリアの話も元を正せば、この「原油価格」下落に起因しているわけです。
しかもサウジアラビアのCDSスプレッドは上昇の一途とたどっており「原油価格」の推移とは完全に逆相関状態で、外貨の取り崩し、国家プロジェクトの支払い遅延、ソブリンファンドの金融市場からの撤退など、一昔前の「オイルマネー」の動きとサウジアラビアが直面する現状とは大きくかけ離れていることがわかります。
イラン原油生産が元にもどる来年春先に原油価格の底がやってくるか?
「シェールガス」潰しとさえ言われたサウジアラビアの減産拒否も、ここまで「原油価格」が下がっては減産をして価格を維持しない理由が実に釈然としない状況ですが、現在やっと生産を再開したイランの原油精製は来年春先には完全に元に戻ると見られております。
つまり、このタイミングにさらに大きな「原油価格」下落が再度示現する可能性があると想定されはじめているのです。
そうなると・・底にむけてユーロなどが下落する可能性はかなり強く、ドル円も来年春先に向けて100円方向に逆走しないとも限らない状況がやってきそうで、今後為替の動きを占う上で「原油価格」について日頃からチェックをしておく必要がありそうです。
ドル円相場が「原油価格」次第というのもなんとも不思議な感じですが、いまやそのぐらい「原油価格」が世界経済にマイナスに影響するようになっており、産油国自体がぼろぼろの状況に陥っていることは間違いありません。
当然のことながら、こうした状況は米国にも大きく関係しており、米国だけが利上げをして涼しい顔をしていられる状況ではないと考えられます。
また現実問題として「金融緩和」を継続すれば「デフレ状況」を克服できるのかどうかはまだはっきりしたわけではなく、特効薬と決め付けるのも難しいのが本当のところといえます。当分「原油価格」からは目が話せない状況が続きそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)