中国人民銀行(PBOC)は10月23日夜政策金利を0.25%引き下げとする「金融緩和策」を発表し24日から履行することを宣言したことから市場はこれを好感し、ドル円は121円台中盤、前日の「ドラギマジック」で大きく下げたユーロドルは1.10を割れる動きとなりました。
決められた日時に政策金利を発表するのではない「中国人民銀行」のやり方は投資家にとっては、良いような悪いような存在ですが、26日からの週に更なる措置が登場することに対してかなり注意が必要になってきています。
中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議(五中全会)にも注意が必要
中国では次の五ヵ年計画(十三五)を決定するための「五中全会」と呼ばれる会議が26日から29日まで開催されます。
注目は成長見通しの数字ということになりますが、先般発表された7~9月期の「GDP」も7%を切れながら市場予想よりはましの6.9%という、これまた嘘か本当かわからない絶妙な数字が発表されて市場では好感される一方、本当なのかという疑心暗鬼のコメントも多く聞かれています。
ただ「中国人民銀行」は緩和措置に関しては金利の引き下げを含めて、まだまだ先進国の「中央銀行」よりも打つ手を持っていることは事実であり、今回の突然の利下げのように五中全会の期間に前後して何か追加措置が飛び出してくることに注意が必要になってきています。
市場ではもっぱら「ECB」「FRB」「BOJ」の会議スケジュールだけがフォーカスされてきましたが「FOMC」と「BOJ」の政策決定会合は何も新しいことが出ない可能性が大きくなっているだけに「中国人民銀行」ネタだけで市場がプラス方向に動くこともあることは認識しておく必要がありそうです。
国営銀行・中央銀行も対象に汚職撲滅との報道も
大和総研は「中国の低成長はいわれているほど悪化ではない」との見解を発表
この嘘か本当かほとんど見分けのつかない中国の経済成長の実態ですが、10月21日に大和総研経済調査部の主席研究員 齋藤尚登氏が「中国:6年半ぶりの7%割れだが・・・」(全10ページ)を発表し、「景気減速は今に始まった話ではなく、巷でいわれるほどの悪化ではない」という見方を示しました。
確かに「PBOC」はやろうと思えばまだまだ打つ手があり、本格的な「金融緩和」はこれからできる状況ですし、昨日今日悪くなった話ではなく、すでに数年前から低成長は実際には起きていたので、いまさら驚くべき話ではないとする説が登場するのは、ある程度うなずけるものがあります。
その一方で、既に別のコラムでも書きましたように公表されている外貨準備が本当はまったくなくなっているのではないかといった疑いを向けたくなる部分も多々あり、共産党国家なのだから最悪はたくさんお金を刷って何とかするだろうという安易な見方ができなくなってきていることもまた事実といえるのです。
先進国の金融市場にとって好意的にとらえられる政策は、リスクオンで相場の上昇に貢献してくれますが、ネガティブな情報が今回の五中全会と相前後して登場することも十分にありうるわけです。
先進国の「中央銀行」の政策決定だけに気をとられていると・・思わぬ落とし穴にはまりかねない一週間となりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)