22日、日本時間20時45分に「ECB」理事会は「政策金利」を発表し、主要金利を据え置きました。
しかしその後の「ドラギ総裁」の会見で、今年3月から始まった「QE」による資産購入で物価上昇が示現しない状況が続いていることから「金融緩和」の度合いを、最新のマクロ経済予測が手に入る12月に再検証する必要があるとし「警戒を怠らずにいたい」と付け加えました。
これにより、ユーロは一斉に売られることとなり、実に「政策金利」据え置きから200ポイント近く下落することとなりました。
またも成功したドラギの口先介入
毎回「ECB」の会見をリアルタイムで見ていますとよくわかりますが、ほとんど為替が動くのは政策発表ではなく「ドラギ会見」ということになります。
「ドラギ総裁」になってからまず理事会後の記者会見で市場にヒントを与え、次の理事会で決定し、その後さらに時期を置いて実施となります。
今年3月「QE」実施の場合も前年の12月に示唆し1月に決定し、実施は3月からとなっています。ですから、この流れでいけば12月になんらかの緩和措置が発表になる可能性は高いといえます。
現実的には追加緩和の手は限られる
「ドラギ総裁」の手法上のアプローチは見事としかいいようがありませんが、現実的な側面で考えた場合、本当に追加緩和の余地があるのかどうかという点についてはかなり疑問の残るところです。
日本の場合は購入した「国債」の代金が、民間の銀行を通じて「BOJ」の当座預金にただ単に戻って積み上がっている状態に過ぎない状況と比較すれば確実にその効果を上げていることがわかります。
ただし、その一方で既に金利はマイナスに陥っている以上これ以上下げるわけにはいかず、資産買い入れといっても日本同様国債の買い入れ余地はほとんど残されておらず、しかも民間の社債などの買い入れがどこまで実施できるかにはかなり疑問が残る状況となっています。
日本も欧州も「QE」を拡大できない状況に陥っていることは間違いなく、本来は財政出動が必要なはずですが、「金融緩和」だけで市場をコントロールすることに限界が近づいていることを示唆する相場状況となっています。
せいぜい実施できてもQE期間延長か
実際「ECB」が追加緩和に踏み切るとしても期間の延長といったことだけで、実際に買い入れができる額を増やせるかどうかはかなり疑問が残るところです。
また米国は利上げではなく「QE4」を余儀なくされるのではないかといった市場観測もではじめており、果たして米国が「QE」を復活させたときに、欧州の「QE」がこれまでどおりの効果を発揮するのかどうかも大きな問題となります。
さらに一回目の「QE」は少なくとも3ヶ月から半年程度の実効性が期待できていますが、二度目以降はその賞味期限は極めて短くなることも間違いなく、こちらも実施の現実性に水を差す状況となりそうです。
「ドラギ総裁」は近年「中央銀行」のマネジメントを牛耳る「MIT学派」の重要なメンバーのひとりであり、「FRB」の「スタンレー・フィッシャー副議長」はその「MIT」における博士号取得時の指導教官という極めて近しい関係にあるだけに「FRB」との連携もしっかりとっていることが窺われます。
ギリシャの「EU」入りの際に錬金術を提案したゴールドマンサックスの副会長を務めていたのもこの人物ですから、見かけの温厚そうな雰囲気とは異なる部分をもっていることも事実で、直近の「中央銀行」総裁としてはもっとも侮れない人物であることは間違いありません。
果たして12月に具体的な追加QEのアナウンスが登場するかどうかに注目が集まることとなります。
(この記事を書いた人:今市太郎)