今年7月にもご紹介した「エリオット波動分析」の専門家である三菱UFJモルガンスタンレー証券の宮田氏は足元の相場状況をどのように見ているのか?
上記の前回の記事から、3ヶ月経過したこの時点で再度とりあげてみたいと思います。
エリオット波動理論は、相場のチャートの上げ下げの形状から、今どこに位置していて、今後どうなろうとしているのかを予測するものです。
しかし、実際の相場のチャートの形状を適当に解釈して当てはめてしまいますと、実態と全く異なる分析になることもしばしばあるもので、素人が最も手を出しにくい分析法ともいえます。
国内ではこのエリオット波動についてもっとも造詣の深い宮田氏のレポートはかなり示唆にとんだものということができ、注目に値するものです。
今回は個別の相場に対する視点にフォーカスしてご紹介していくことにしましょう。
ドルインデックスの中期トレンドはドル安
為替市場を動かす大きな原動力となっているのが、ドルインデックスの動向ですが、宮田氏の分析によれば2011年7月の「72.696」からはじまったドル高トレンドは今年3月の「100.39」で終了したと見ており、中期トレンドをドル安と見ているところが注目されます。
10月14日には「93.845」までドル安が進み、「94.063」という9月18日の安値を割り込む形となっていますので、今後は金価格の上昇やユーロ上昇との逆相関で更なるドル安が続く可能性を同氏は示唆しています。
当面の下値は8月の安値である「92.621」を下回るのではないかとしているところが注目されます。
ユーロドルの当面ターゲットは8月高値の1.1714超
3月16日に「1.0458」の安値をつけたユーロドルはこの時点で15年サイクルボトムをつけた可能性が高いとされています。その場合2016年はユーロ高が続くと宮田氏は分析しています。
ターゲットは2014年からのユーロ安に対する38.2%戻しである「1.1808」から61.8%戻しとなる「1.2643」までが想定されるとしています。
さらにそれを超える上昇となった場合には「1.32」レベルへのユーロ高が考えられるとしています。
ドル円は円安A波が終了か
注目されるドル円は基本的には7月における見方と変わっていませんが、2011年10月の「75.35円」を起点とする円安トレンドA波は6月5日ですべて完了し、円高B波が既に始まっているとするのが宮田氏の見方です。
8月ぐらいまではさらに「130円方向」に上伸する可能性もありましたが、10月のこの段階で「119円割れ」から下値を試そうとしているわけですから、少なくとも今年の高値は既につけ終わった可能性が高いといえます。
宮田氏は「2016年5月に1ドル100円」を目指してもおかしくないと指摘していますが、年間15円程度は動くドル円とすると、ここから100円はそう遠くない距離にあり、現実味が高まってきています。
具体的な相場状況でいいますと、13週MAと26週MAが「121.87円」レベルで10月第二週にデッドクロスし、中期的なドル安、円高基調を暗示するものとなっています。
また「アベノミクス」スタート後初めて52週移動平均を相場が割りそうな状況で、週末段階で52週MAを割れるとなるとアベノミクス円安以降はじめての円高方向ということになります。
さらに「IMM」のポジションも大きくドル買い円売りポジションが解消しており、こちらもこの先「アベノミクス」スタート後はじめての円買い超しが起こりそうな状況で、明らかに流れが変わってきていることを示唆している状況です。
既に停滞感を強めてきた「三角持合い」は10月14日に「118円台」に突入したことから、下放れは明確となり、「8月24日安値の116.18円」を下回る展開が予想されるとされています。
日経平均は18468円を早急に上回らないと1万7000円割へ下落
ドル円に大きな影響を与える日経平均ですが、すでに10月14日には25日MAを割れる状況となっていることから上値の節目である「18468円」を短期間に上回れるかどうかがこの先の動きを占うことになりそうだとされています。
ただし「16901円」を割ったところでB波によるリバウンドがおき「19200円」を目指すことが想定されるともしています。
エリオット波動分析はあくまでテクニカル的なもので、人為的に施される「中央銀行」の横槍となるような政策変更は経済的な事象、地政学的なリスクなどは加味されていません。
ですから、何か変化が起こればこの通りに動くとは限らないことは十分に認識しておく必要がありますが「フィボナッチ」を多用しているこの理論はなぜか当たることが多いのも事実であり、ポイントとなる相場レベルは頭に入れておいても損はなさそうな内容といえます。
7月時よりも示唆された内容に近づいているところが何とも気になる部分となっています。
(この記事を書いた人:今市太郎)