世界最大の政府系ファンドをもつノルウェーは、10月第一週に8200億ドル規模の資産を、ファンドを立ち上げてから初めて取り崩す意向を発表しています。
これはサウジアラビアに次いでの動きであり、これでノルウェー、カタール、サウジアラビア、ロシアなど原油高で利益を積み上げてきた国のほとんどがその富を取り崩し始めており、相場から資金が撤退していることがわかります。
ソブリンウエルスファンド協会の発表によれば、こうした資源国の運用投資資金の総額は約880兆円にものぼり「ヘッジファンド」の運用資金のざっと4倍以上にもなっているわけですから、資金の市場からの撤退がいかに深刻なものであるかが容易に想像できる状況となっているのです。
当分原油価格を横目でにらむ市場が続く
8月末の「NYダウ」の急落、9月に入ってからのサウジの政府系ファンドの撤退報道を受けたCTAの売り浴びせに端を発する日経平均の1万7000円割れなど、必ずしも中国の問題だけでは理解できない市場状況が続いています。
このような状況に加えて、こうした「オイルマネー」の市場からの撤退の動きを重ね合わせてみますと、その背景に市場の構造的な変化が示現していることが理解できるわけです。
深刻なのは、こうした資源国が各国財政上で赤字を抱え始めていることで、あのサウジアラビアでさえ、政府系の職員に倹約を呼びかけるようになっている。という話は状況の変化を如実に表した話となってきています。
投資資金が減るということは簡単に株も上昇しないということであり、米国の利上げが長年継続してきた過剰流動性をさらに縮減するきっかけとなる可能性もあるため、市場の変化には予断を許さない状況が続きそうです。
これまでドルが下落する局面では「原油価格」が上昇するといった逆相関の関係は見られてきましたが、「原油価格」から「オイルマネー」をにらんで為替相場の上昇下落まで意識したことは殆どなかっただけに、ある意味で新たなファクターが投資基準に加わったということも言えます。
最近の状況は、より相場に対する判断が複雑化していることを痛感させられます。
10月末買いの例年のアノマリーは今年も継続するのか?が問題
例年、株式相場は「ハロウィンエフェクト」などと呼ばれて10月末に買いをいれておけば、すくなくとも翌年4月に売ることで応分の利益をえることができており、ここ数年はドル円もこの「アノマリー」にしっかりと準拠した動きが見られています。
しかし、今年については目に見えない構造変化が現れるようになっており、例年どおりの動きにならない可能性もでてきているといえます。
したがって今年もこれに乗ってみるとすれば、翌年4月まで欲張らず年末で一旦利益確定をしておくとか、逆走の動きがでたらすぐに損切りをするなどの臨機応変で、きめ細かい対応をあらかじめ、決めた上で相場に臨むことが必要になりそうです。
オイルマネーはロンドン経由で売りが出るというのがもっぱらの噂
ただし、市場で囁かれ始めているのは、英国の運用会社が売り浴びせしてくるときには「オイルマネー」の撤退が絡んでいる可能性が高いということです。
実際財務省が公表している対外・対内証券投資で国・地域別データを確認しますと、8月に日本株を売り越した筆頭はまさに英国で、その額は7644億円に達していることがわかります。
ロンドンタイムの株や為替の動き、並びに「LONDON FIX」のイレギュラーな動きは翌日の「東京市場」にも大きな影響を与える可能性がありますので、このあたりも常にチェックしておくことが必要になりそうです。個人投資家は上げるにしても下げるにしても相場についていくしか手はありません。
相場の流れがどうなろうとしているのかを、しっかり見極めることを強いられる年末までの3ヶ月相場が到来してこようとしているのです。
(この記事を書いた人:今市太郎)