国慶節で一週間ほどお休みだった中国市場のおかげで、何となくリスクが後退したような気分にさせられている10月です。
しかし、中国に関しては相変わらず「何が本当で何が嘘なのかさっぱりわからない状況」が続いており、油断は禁物であることは間違いありません。
470兆円以上あるといわれてきた外貨準備本当はいくら残っているのか?
「習近平」が訪米して金融関連で「オバマ大統領」とどのような話をしたのかは、その後もまったく漏れ伝わってきていませんが、どうもおかしいのが中国の本当の外貨準備額の問題です。
下記は「eワラント証券」がホームページで公開しているデータです。
中国でオフィシャルに公表されている「外貨純資産額」は対外純資産の2.2倍にも上っており、日本の構造とはかなり異なることがわかっています。
通常、外貨準備というのは「まさか」のときに使うものですから、国債など換金性のいいもので保有するのが定石です。これまで散々「為替介入」で膨れ上がった外貨準備を一体この国は何故に保有し続けているのか?というのが非常に大きな疑問になりつつあります。
米国債を大量に持っているとはいうものの、その額は2014年末で150兆円ほどですから、最近は大分減少しているとはいえ、外貨準備の残りを一体何にして保有しているのかが問題になるわけです。
中国の金の保有量は意外に少なく、外貨準備のたった2%程度とされています。
すると残り300兆円以上をユーロ国債で保有している。というのはどうも無理があります。
最近「デフォルト」寸前のベネズエラやアフリカの新興国への投資で焦げ付いていて、実際には取り崩せない資金がかなりこの外貨準備の中に混じっているとなると、この先外貨準備不足の問題は大きなリスクの引き金になることも考えられるのです。
外貨準備が枯渇寸前と仮定すると一連の中国の行動には整合性がでてくる
実は中国が公表しているほど外貨準備がないと仮定した場合、アジア投資銀行「AIIB」で積極的に他国から資金を集めた行動も「SDR」採用により米ドルを利用しなくても「人民元」で決済ができるようになることに異常にこだわる姿も、相変わらず管理相場を続けているのもすべて話が繋がります。
また、8月に突然「人民元を切り下げた」こと自体納得のいく行動という事ができてしまうわけです。
おそらくこの外貨準備不足については、いきなり不足していました。というよりは段々と公表してつじつまを合わせていくことになるのだと思いますが、何かがきっかけでこの事実がはからずも露見されることになれば、相場にはまた大きな変動が生じることが予想されます。
問題はいつこうした事実が明確に露見するか
これまで中国は資金的に十分な蓄えがあり、世界最高水準の外貨準備のある国であることから、まだまだ国として経済政策に打つ手は残されており、それほど心配したものではないと言われてきました。
しかしそれほどの外貨準備もなく、上海市場の暴落を買い支えるために相当額の米国債も既に売却を始めているとなると、中国をとりまく事態はそう楽観的なものではなくなってきてしまいます。
今後米国が利上げを行った後に、続けて「人民元の切り下げ」を行う可能性も指摘され始めていますが、実は中国の外貨準備が「張子の虎」でほとんど嘘だったという事実が露見するリスクは、いつどのような形で市場に示現するのかまったく想定できません。
我々個人投資家は、ストップロスを置くことぐらいしか予防措置がとれないのが実情です。
このまま何事もなく、平穏無事に2015年も終了することになるのかどうかは依然として大きな心配事として残りそうな気配です。
為替市場は、のど元を過ぎると事態が変わっていなくてもすっかり問題視しなくなるという、実に特別な習慣をもった市場です。
中国に関する心配事も急激なリスクとして再認識される可能性があることだけは、念頭において年末にむけての売買を進めていくことが肝要となりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)