この「FOMC」議事録にかかわった人間の口から作成の舞台裏が暴露されるようになっており、必ずしも額面通りに受け取れない微妙な状況があることが次第にわかってきているのです。
FOMC三週間後に公表されるのはあくまでデフォルメされたサマリー
米連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストとして約2年にわたり議事録編集に携わった経歴を持つ米ピーターソン国際経済研究所の「ジョゼフ・ガニオン」上級研究員は、いくつかの米国メディアの取材に答えて、その内容に騙されてはいけないとの警告を発しているのです。
もちろん議事録ですから虚偽の内容が書いてあるわけではありませんが、幾つかの重要な詳細部分は5年後の全記録公表でしか明らかにならず、その他の手掛かりは読み違えられやすい状況が続いているとガニオン氏は指摘しています。
毎回行われる2日間の「FOMC」の審議内容の発言はすべてが盛り込まれているわけではないことがわかります。議事録は当初、少人数の「FRB」スタッフが初稿を準備し「FOMC」開催後の週後半に議長の点検を経てFOMC当局者全員に配布されることになるといいます。
この段階で修正や補足の提案を受けて第二稿が翌週にまとめられることになり、議事録公表前日の正午までに最終的な承認を求めるのが公表までのプロセスとなっているのです。
しかしこの段階で、特定のコメントについて議事録採用に十分な重要性があるか委員の中で意見の相違が発生することもしばしばのようで、最終的に「イエレンFRB議長」が判断を下す事になるのです。
事務的につくられた記録でないだけに不都合部分は割愛されることも
なんだ。それでは正確な議事録ではないだろうと憤慨される方も多いかと思いますが、実はそういう性格のものがこの「FOMC議事録」で、最終的に5年後には本当の詳細議事録が開示されますので、そこで照合するしか事実はわからないのです。
米国の金融市場にはFedウォッチャーとよばれるFedの動きと、FOMCの中身を詳細分析するエキスパートが存在しますが、このFOMC議事録はある種のコード解読のような世界が存在しており、民間人が斜めに読んで理解できる代物ではないことが判明し始めているのです。
言葉遣いにもすべて定義がある
具体的にいくつかの例を示すと次のようなものが挙げられます。
まず話者の微妙なランク付けが設定されているのです。「FOMC」出席者はparticipant(参加者)という記述であり、政策決定のための投票権を持つ人たちだけがMember(メンバー)と記されることになります。
メンバーには「イエレンFRB議長」をはじめとする理事らとニューヨーク連銀総裁のほか、輪番制で地区連銀総裁4人が含まれ、こう記述されているわけです。
議事録には、参加者やメンバーの何人が特定の見解を支持したかを表す、大まかな目安となる集計用語が存在するとされています。
しかもこの記述には厳密な順位付けがされているといいます。例えばMany(多くの)はSeveral(幾人かの)よりも多いが、Most(大部分の)より少ないといった具合です。
これは事前に言葉の定義を知らなければ理解できないものです。コーン元FRB議長も議事録の記載方法について発言していますが、この議事録は誤解を招き得ると指摘しています。
それは、参加者誰もがあらゆる論点について話すことができるわけではないからで、議事録上でa few (数人)」が何かを発言したと記されていても、必ずしも同意見でない人が他にたくさんいるわけではなく、実はそれが主力の意見であることあり得るということです。
こうした解説を受けて唯一理解できることは「FOMC議事録」を見ても、その先どうなろうとしているのかは全く分からないということです。
9月17日以降確実に上がったのは「イエレン議長」の血圧だけで、後はどうなろうとしているのかさっぱりわからないというのが最近の状況です。
「イエレン議長」は就任後まだ市場の厳しい洗礼を受けずに今日に至っています。
金利上げるあげる詐欺のような発言が、この先市場にどのような影響を及ぼすことになるのかが大きく注目されるところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)