米労働省が発表した9月の米雇用統計(10/2発表)は「非農業部門雇用者数」が14万2000人増と市場の予想の20万3000人増を大きく下回ることとなりました。8月分も13万6000人増に下方修正され、ドル円は大きく売られて一時119円台を割り込む展開になっております。
「FRB」の利上げは、短月の経済指標だけで判断されるわけではありませんから、この結果がダイレクトに米国の利上げを引き止める要因になるとは必ずしも言えません。
しかし、「FRB」はあらゆる経済データに対して敏感になっていますので、少なくともこうした情勢下において、10月利上げの可能性は大幅に後退したと言えそうです。年内に起こりうる利上げのシナリオは、ますます減少し始めています。
久々にジブリの呪いアノマリーが大当たり
為替の世界では雇用統計の晩の金曜ロードショーにスタジオジブリのアニメが放送されると、番狂わせが起きるという「アノマリー」がまことしやかに語られてきています。
今回は、それが的中したようで、久々に相場予想を大きく狂わせるNFPの結果を受けてドル円は119円割れまで大きく下落しました。
ユーロドルは1.13台に回復しましたが、スタンレーフィッシャーFRB副議長のボストンでの講演が始まる前、午前2時過ぎには下落の半値以上を戻す形となり、株価の上昇に助けられた状況となりました。
9月のFOMC結果に対する市場の反応に一番驚いたのはFRBメンバーか
これまで米国の株式市場は利上げが行われないとなると、安堵感から株価を上げるという動きを毎回示現させてきましたが、9月「FOMC」後はNYダウも大きく下落を始めており、ある意味で「FRB」にとって予想外の動きになってしまったようです。
9月については米国の主力金融機関が利上げを強く要請したにもかかわらず、実施に至らなかったことなどから失望売りも出たようです。
10月を見送りとした場合に考えられるこれだけの12月再見送り要素
とりあえず10月利上げがなくなったと仮定した場合、原油安による米設備投資の4割を占める石油掘削(シェール)関連投資の停滞が起こります。
その他の要因として、来年オバマケアで米国民の保険料・医療費が3割上昇すること。
賃金が多少上がっても可処分所得が増えないという現状。
さらに雇用統計のパートタイマー算入で名目上は失業率低下「完全雇用」に見えても賃金上昇が鈍く期待インフレが低迷することなどが阻害要因として立ちはだかることになります。
さらに年末に利上げしてクリスマス商戦に影響がでれば、米国の「GDP」にもっとも大きなウエイトとなっている個人消費の数字に深刻なダメージを与える可能性があります。
「FRB」は選択肢として最後までその可能性を示唆することになると思われますが、年内利上げは一段と遠い状況になってきているようです。
10月FRBが利上げしないのに日銀だけ追加緩和するのか?も問題に
一方、日銀の政策決定会合は10月2回が設定されており、10月7日にもETFの増額を含むなんらかの緩和策がサプライズ的に行われるのではないかと見る外資系金融機関のレポートも発表されています。
しかし、下がったとはいえ1万7000円~1万8000円の日経平均に120円近辺のドル円の状況下で、株価吊り上げだけの為に日銀が簡単に追加緩和に踏み切ることができるのか?は市場の判断もかなり分かれる事になっています。
仮に7日の緩和措置の見送りでも30日のほうはまだまだ期待が残ることとなりますが「FRB」が10月も利上げを見送る場合、日銀だけが緩和を発表するのかどうかも微妙であり、10月が無風で終わることも視野に入れておく必要がありそうです。
依然として株も為替も下方向への注意が必要
ドル円はすっかり上値を追う要素がなくなってしまい「200日の単純移動平均線」から見るとぎりぎりのラインがその下に回りこんでいる状態となっています。
これまでの官製相場ですっかり慣れてしまった逆張りも、200日MA以下のゾーンでは迂闊にできない状況が近づいてきています。
大きなポジションを保有するのではなく、かなり慎重なタイミングで市場に参入する事が求められそうな10月相場です。
(この記事を書いた人:今市太郎)