9月22日、日本がシルバーウイークで連休に入っていた間に、サンパウロ外国為替市場において、レアルは前日比1.8%下落。1ドル=4.05レアルで取引を終えました。9月24日には更に安値を更新。1ドル4.24レアルまでつけた後に反発をする形になっております。
これは、1994年の現行通貨導入以来の最安値を更新することになっているのです。
そもそも、ブラジルのこの状況は「ルセフ大統領」による現政権の政策運営の失敗なども色濃く影響しています。ただし、直近の状況は「コモディティ価格」の影響を直接受けている事に起因しており、特に米国の利上げ見込みがボディブローのように効いている事を如実に表しています。
リーマンショックを下回るマイナス成長となったブラジル
ブラジルは「BRICs」の一員として新興国経済の成長を担う国としての期待が高く、2016年にはリオデジャネイロオリンピックが開催されるのはご案内のとおりです。
しかし、下手をすると前代未聞のオリンピック前デフォルトが実現してしまうのではないかとさえ思うほど危機的な状況に陥っています。
これで、ブラジルは5四半期連続のリセッションを継続することになります。
ブラジル中銀は政策金利を「7.25%」から「14.25%」にまで引き上げて引き締めに躍起ですが、一向にその効果は現れずにとうとうレアルの大幅下落が始まっている状況です。
こうした経済状況は、ブラジル固有の問題によるところもありますが、実は資源国として有名なカナダも既にリセッション入りしており「コモディティ」を扱う資源国が総じて景気減速から明確な景気後退へとシフトし始めている事が窺がえるようになってきているのです。
既にS&Pはブラジル国債をジャンク級に引き下げ
9月9日には米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がブラジルの信用格付けを、ジャンク(投資不適格)級に引き下げています。
当然「フィッチ・レーティングス」と「ムーディーズ・インベスターズ・サービス」も近く格付けを実施することが予想されており、オリンピックの前にとんでもないことが起きる可能性も否定できない状況になってきているのです。
ブラジル経済は最大の貿易相手国である中国への「コモディティー」輸出に大きく依存しているのはご存知のとおりですが、中国経済の失速をモロに受けている状態で、そこに米国の利上げ観測が浮上している事から、リスクはさらに高まりつつあります。
ブラジルのCDSが過去最高のレベルまで高くなっていることを見ても、市場がかなりのリスクを感じていることがわかります。
FRBが中国や新興国の経済状況を無視し得ない状況がやってきた
米国に利上げを留まるよう警告を強めている「IMF」のラガルド専務理事は、
「世界の成長ペースは7月よりも弱い可能性が高く、先進国の回復が弱い事に加えて中南米を始めとする新興国の一段の減速があげられる」
と指摘しており世界経済の下振れリスクの高まりに対する警戒感を強めています。
これまで「米国FRB」は新興国を始め、他国の経済状況を勘案じて「金融政策」を進めてきた事はありませんでしたが、経済のボーダーレス化によって資源国や新興国の鈍化はブーメランのように先進国経済に影響を与えることは間違いなく、米国だけが一人勝ちする状況を作り出すことができないという点については十分に認識がされていることと考えられます。
非常にモラトリアム的に態度を明確化することを避ける傾向にある「イエレン議長」の性格から考えれば、年内に無理して利上げをする事を避ける可能性が高い外部環境になりつつあるといえます。
FRBメンバーの地区連銀総裁はしきりに12月までの利上げを示唆するが・・
9月の「FOMC」以降「FRB」メンバーである地区連銀総裁の多くが12月までの利上げを強調してバランスを取り始めているように見られますが、実はこうした周辺からの事態の変化が「FRB」の利上げ時期をさらに後ずれさせる大きな要因となることは間違いなく、ブラジルでデフォルトが起こればリスク回避に大きく傾く可能性も出てきているのです。
ブラジルは世界の「GDP」のランキングでイギリス、フランスについで7位にランクされております。
このランキングは実はロシアよりも大きいわけですから、単なる新興国という位置づけに留まるわけには行かず、かなり深刻な影響を与えることが予想されます。
引用元:by 世界の名目GDP(USドル)ランキング
為替の世界では当然豪ドル、NZドル、南アランドなど他の資源国通貨にも大きな影響を与えることは必至で、リスク回避からクロス円が円高に向かえば、ドル円やユーロ円が大きく円高にシフトしてしまうリスクについても想定が必要になりそうです。
ご覧のように思わぬところから為替の変動要因が高まっている状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)