皆さんご案内のとおり、17日(日本時間18日午前3時)FRBはFOMCにおいて利上げをまたしても見送っています。
13人の委員が依然年内利上げ見通しをたてているわけですから、引き続き年内利上げ見通しは続くことになり、来月末もまた今月と同様の動きが展開することが決定的となっています。
しかし利上げ余地は後ずれが進むにつれて少なくなってきており、状況によっては年内に利上げがなくなることも想定しておく必要がでてきているイエレン議長の会見でした。
※FOMC後のドル円値動き(15分足)
とうとう中国と新興国懸念を口にしだしたFOMC
イエレン議長が会見で口にした主なキーフレーズは以下のとおりです。
1.インフレは目標を下回る水準が継続している
2.初回の利上げ時期を過度に重視するべきではない
3.利上げのタイミングは経済見通しの評価による
4.賃金の伸びは引き続き弱い
5.海外の見通しは不確実性が増大した
6.金融市場のボラティリティは顕著になった
7.金融状況を引き締めれば、米国の成長が抑制される
8.金利上昇の軌道は緩やかなものになるだろう
9.当局の大半は引き続き年内の利上げ開始を予想
10.利上げの軌道は想定よりも速くも遅くもなりえる
11.評価により多くの時間を求める
12.10月の利上げ開始も可能
13.必要なら特別に会見を設定できる
14.全ての会合が政策変更の対象
利上げはしなかったものの妙にハト派的にならないように、しきりに年内利上げの可能性を示唆する発言を繰り返しているイエレン議長ですが、利上げのファクターは揃ったものの、中国と新興国の問題から今回も利上げを見送ったことをFOMCの声明は明確にしています。
この先、議事録が開示されれば更に明確になりますが、さすがにFRBも自国の問題だけでは利上げをできなくなってきている事を示唆する声明内容であり、年内の利上げ余地を残しても実際にできるかどうかはわからなくなってきている印象が今回のイエレン発言でも見受けられる状況です。
利上げありきの政策決定にすでに無理が生じている
8月、事前に世界経済の先行き不安とFRB利上げ牽制を誰よりも行ってきたはずの「レイ・ダリオ」のマクロファンド・ブリッジウォーターアソシエイツは、それにもかかわらず自社の運用ビジネスにおいて4%の損失を出しています。
それぐらい注意していても損を抱える状況となっていることが覗い知れるわけですが、そのレイ・ダリオは利上げありきで政策を行おうとしているFRBのやり方が政策決定上のフレキシビリティを欠いていると指摘をしています。イエレン会見を見ていますとまさにその部分が露見している気配が感じられます。
議長自ら年内利上げを早々と口走ってしまっていることから、その整合性をとるためにしきりに10月以降の利上げを示唆しているように見えて仕方ない会見となってしまいました。
10月に向けて二番底を試しにいく動きにも依然注意が必要
習近平が9月末に訪米しますが、米中での会談がおこなわれると、ますます利上げが遠く可能性もでてきています。
FRBは中国人民銀行ともコンタクトを取っているようで、中国の外貨準備などが米国に内々に開示されるようなことでもあれば、彼らが保有する米国債の売却にもつながることから、利上げどころではなくなる可能性も残されてきています。
また8月24日以降における二番底を株も為替も試しにいく可能性は依然残った形となっています。今回利上げが行われればそうしたリスクはある程度払拭されたのかもしれませんが、何も起こらなかったことで、引き続き下落リスクが市場に残った形となっています。
200日移動平均線の下側では逆張り要注意
一部の米系投資ファンドでは、株もドル円も200日平滑移動平均を相場が下回った状況での相場展開において逆張りの買い向かいを中止するところが出始めています。
10月に可能性の残された大きな下落を示現したところでゆっくり買い場を探し、ハロウィーンエフェクトにつなげていく売買を行うことが当面重要になりつつあるようです。
今回のFOMCの結果を受けて、相場は引き続き難しさを引き伸ばした格好になってしまいました。
(この記事を書いた人:今市太郎)