いよいよ今週、9月17日(木)にFOMCが開催されることから、この結果を見るまでは株も為替も膠着状態を続けることになりそうです。
ここへ来て「米国の利上げは今行うべきではない」との否定的な意見をあからさまに、各要人が発言し始めており注目が集まりつつあります。
ツイッターで強く利上げを否定しはじめたサマーズ
FRBのMIT学派の理論的支柱にもなっている米国のサマーズ前財務長官は先週からかなりの頻度でツイッターで利上げに対するけん制発言を繰り返し始めています。
「来週利上げをしなくて後悔したとしても、7週間後には利上げすることはできる。しかし、来週利上げして間違いとわかったら、深刻な問題になる。金融市場は劇的な出来事に見舞われる。」
といった内容が骨子のつぶやきを非常に増やしていますが、FRBで投票権を持つ地区連銀の総裁はこうした発言の影響をもっとも受けやすいことから、イエレン議長がそれを押し切って利上げを行えるのかどうかがどうやら今週最大の注目点になりつつあります。
そもそもサマーズは、金融緩和ではなく財政出動をしないと景気は回復しないとしており、この点でもFRBの政策とはかみ合わなくなってきています。
IMF・ラガルド専務理事も明確に利上げをけん制
これまで米国の付属機関的色彩の強かったIMFですが、フランス人のラガルド専務理事は9月初頭のG20の席上で「米国のこの段階での利上げが新興国に多大な影響を及ぼすことになり、一度利上げしてもまた利下げに追い込まれるので意味がない」といった発言をして注目されています。
利上げ決定は将来的に覆されない確信が持てたときに初めて実施すべきだと述べ、決定を急ぐべきではないとの見解を強く示しているところが大きなポイントで、IMFが米国は利上げ後に結局再度金融緩和をする羽目になると見ているところに、関心が集まっている状況です。
レイ・ダリオは利上げ後QE4の実施に迫られると予言
米国の代表的ファンドであるブリッジウォーターアソシエイツの「レイ・ダリオ」は、FRBの次の動きは金融引き締めではなく金融緩和であるとの見方を示しており、今回利上げをせざるを得ない状況でも結果的にFRBはQE4に追い込まれることを示唆しています。
また、FRB当局者が引き締め路線にコミットするあまり、かなりの緩和措置が必要になった場合でも路線変更が困難になるリスクに我々は直面しているとも発言し、利上げありきのスケジュールでFRBが動いている点も、選択肢を狭めるものとして厳しい指摘をしています。
利上げ実施後市場にどのような変化が起きるかが問題
依然として9月17日に0.125%であっても利上げが実施されるのかどうかは不透明ですが、こうした要人の異常にナーバスなFRB利上げへのけん制発言を見ていますと、どうやらこれまでと異なる動きが金融市場に発生する可能性を想定しておく必要がありそうです。
つまり為替の世界では「米国利上げ=ドル買い」が当然の方向と見られていますが、新興国通貨や資源国通貨に対しては確かにそうした動きになることは想定されるものの、この利上げで株価が大幅に下落し始めた場合にはユーロと円に対してはドルが上昇するかどうかはわからない可能性についても視野に入れておく必要があるということを示唆しています。
株がこれを引き金にして二番底にでも向かう形になれば、キャリートレードの巻き戻しからユーロがドルに対して買われる可能性もありますし、ドル円も株価に連動して下落する、円高局面となる可能性すらあるということです。
「FRBの利上げ決定が相場の下落のきっかけになる」とはこれまで考えられてはきませんでしたが、2004年の利上げ状況と大きく異なるのは、既に市中にあり余る程金がばらまかれたままの状態になっている中での利上げであり、2004年の利上げ後の動きを今回市場が正確にトレースすることになるかどうかは不明です。
どうも・・違うことが起きることも想定しておくべきタイミングにさしかかっているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)